自分に合った仕事(その2)
今思えば、案外、営業と言う仕事が自分には向いていたかも知れない、と思ったりもするが、天職と言えるものではなかった。
では、自分にはどんな仕事が本当に向いていたのか?
一つの事にコツコツと辛抱強く成し遂げていくのが、自分は好きであり、自分に向いていると思っている。
そのような性格から考えていけば、研究者あるいは創作者と言ったところであろうか。
一種の職人的な仕事が向いているような気がする。
研究目標を決め、コツコツと辛抱強く実験を繰り返すことはできるが、自分の才能を考えれば研究者として素晴らしい成果を出せるとは思えない。
そうすれば、創作者か?
しかし、自分には新しい発想が次々と出てくるような頭脳を持ってはいない。
むしろ「細かい美術工芸品を昔ながらの伝統に従って作っていく」と言う方が向いている気がする。
いわゆる伝統工芸品作りの職人である。
伝統工芸品と言っても、織物、染色品、陶磁器、漆器、木工品、和紙、石工品等々がある。
その中で私が惹かれるのは木工製作である。
釘を使用せず、木同士を組み合わせて作り上げていく日本古来の建築様式で作る構法に憧れる。
「自分は何に向いているのか」を中学、高校の時に自覚し、将来の進むべき方向を定める事は難しい。
こういう方向に進もうと思っていても、会社に入れば自分の思った配属先で仕事ができるとは限らない。
木工製作に携われるような仕事する人になるんだと覚悟を決め、その方向に突き進めば、本来の自分の道は開けたかも知れない。
大学へ進学する頃に自分はそこまで突き詰めて考えてなかった。
だからと言って、自分の人生は失敗したとは思っていない。
好きでない仕事ではあったが、高度成長の時期に仕事をしてきたことは楽しい事ではあった。
年々売り上げは伸び、給料も上がっていった。
バブルも経験した。
今では良い思い出となっている。
自分の思い通りの人生を送れる人はほんの僅かであろう。
自分に合った仕事ではなかったが、それなりに良かったと思ってはいるが---