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2017年 03月 04日 ( 1 )

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  (現代ビジネスの記事より)

クアラルンプール空港での「金正男暗殺事件」は、2月13日の発生から2週間余りを経て、北朝鮮・マレーシア間の国際問題に発展している。
このまま対立が続けば、これまで蜜月関係を築いてきた両国が、国交断絶にもなりかねない情勢だ。

だが実際には、北朝鮮とマレーシアという「小国」のバックには、アメリカと中国という「大国」が控えている。
そして「小国同士の戦い」の舞台裏では、米中両大国の激しい神経戦が展開されているのである。

例えば、今回の事件捜査に関して、マレーシア警察の手際の良さが際立っている。
それは、アメリカが多くの捜査情報を提供し、捜査のお膳立てをしてあげているからである。

現在キーパーソンになっているのが、金正男氏の息子である金ハンソル氏(21歳)である。

アメリカは、マレーシアをバックアップするという名目で、軍の輸送機をマカオまで飛ばして、ハンソル氏をクアラルンプールまで連れて来ようとしているという。

金正男暗殺事件に関して、アメリカがそこまでマレーシアに肩入れする目的は、主に二つある。

第一に、金正恩政権の転覆を視野に入れているからである。

アメリカで対北朝鮮外交を主導しているのは、ダニエル・ラッセル国務次官補である。
ラッセル次官補は、昨年12月17日に来日し、「トランプ政権になったら金正恩政権の転覆もオプションの一つになる」と、日本政府側に通告している。

北朝鮮問題に関しては、アメリカ国内で北朝鮮が2月12日に中距離弾道ミサイル「北極星2号」の発射実験を行ったこともあって、2008年に解除した「テロ指定国家」を9年ぶりに復活させるべきだとの声も上がっている。

アメリカが北朝鮮空爆を検討する場合、最も重要なのは、中国をいかに説得するかである。

ティラーソン国務長官は、2月17日にドイツのG20外相会合の場で行った王毅外相との初会談で、北朝鮮問題に多くの時間を費やした。

王毅外相も楊潔篪国務委員も、ティラーソン国務長官に対して、朝鮮半島の非核化、地域の安定、対話と交渉による解決という北朝鮮問題に関する「中国の3原則」を繰り返した。

第二に、中国には経済的観点から見ても、北朝鮮有事を誘発しやすい材料がある。
それは、中朝国境の遼寧省と吉林省の経済の沈滞である。

この両省では、鉄鋼業と石炭産業が盛んで、2016年現在で、遼寧省には670社、吉林省には186社もの石炭採掘会社がある。
これらの会社の多くが、未曽有の不景気に苦しんでいる。

両省が不景気に苦しむ理由の一つが、北朝鮮から安価で良質な石炭が、中国市場に大量に流れ込んでくるからである。

中国商務部と税関総署は、2月18日についに、「今年いっぱいの北朝鮮産石炭の輸入を禁じる」という「第12号通達」を発表した。

第三に、習近平主席自身も、いつの日か自らが「3原則」を破る可能性がある。

習近平主席は、今年後半に、5年に一度の中国共産党大会を控えている。
習主席はそこで、国内の権力を完全に掌握したいと考えている。
それには外部に向けて何らかの「アクション」を起こすのが一番だ。

つまり、「共に悪の金正恩を倒そうではないか」と囁くトランプ大統領の提案に応じる機運が整いつつあるのだ。

中国がアメリカと組んで金正恩政権を転覆させるという、いわゆる「北朝鮮生贄論」は、習近平政権内部で一度、検討されたことがあった。
それは北朝鮮が4度目の核実験を強行した昨年1月のことだ。

それまでは、北朝鮮はアメリカ軍が鴨緑江まで押し寄せるのを食い止める屏風のようなものだという「北朝鮮屏風論」や、北朝鮮は中国に代わってアメリカに対して吠えまくってくれるという「北朝鮮番犬論」などが、伝統的な考えだった。
それとはまったく異なる戦略が、昨年年初に俎上に上ったのである。

だが、アメリカが昨年2月7日に、韓国へのTHAAD配備の検討を開始すると宣言したことで、この「北朝鮮生贄論」は沙汰止みとなった。

それでもトランプ政権が、THAAD配備を中止するのなら、「北朝鮮生贄論」は十分復活の可能性があるのだ。

それではもしも今後、米中が共同戦線を張って金正恩政権を転覆させるとなれば、その後の北朝鮮はどうなるのか?

戦後アメリカが、世界中で幾多の政権を転覆させてきたパターンから推測すると、1948年の建国以来、一貫して北朝鮮を統治してきた金王朝の血族の誰かをトップに擁立する可能性が高い。
そのほうが、1800万北朝鮮国民が動揺しないからだ。

そのためアメリカは、金正恩政権転覆の第一段階として、まずは金正男氏をアメリカか韓国に亡命させることを画策していた。
逆に北朝鮮からすれば、金正男氏に亡命されては万事休すなので、その前に刺客を送って亡き者にしたのである。
その意味で米朝戦争は、事実上すでに始まっているのだ。

ハンソル氏は2012年、フィンランド公営テレビとのインタビューで、叔父の金正恩委員長を「独裁者」と呼び、「将来は南北の統一に貢献したい」と述べている。
そのため政治学を専攻し、昨年秋には英オックスフォード大学への留学が決まっていたが、北朝鮮による暗殺を恐れて断念したと報じられている。

それならばアメリカとしては、ハンソル氏を安全なアメリカの名門大学へ留学させることで、将来の北朝鮮のトップ候補として養成できるわけだ。

こうした思惑があるからこそ、アメリカは金ハンソル氏のマレーシア行きにこだわっているのである。
世界がマレーシアを注視しているいまこそ、ハンソル氏に「外交デビュー」させたいのだ。

だがあいにく、現在ハンソル氏が暮らすのはマカオである。
つまり、ハンソル氏の身柄を確保しているのは、中国なのである。

中国としては、おいそれとハンソル氏をマレーシアに送ることはできない。
ハンソル氏がマレーシアへ行けば、この先の北朝鮮問題が、アメリカ主導で進んでしまうからだ。

そのため中国は、「身の安全を確保する」という大義名分で、ハンソル氏を事実上の軟禁状態においている。

思えば、いまから100年ほど前に第一次世界大戦が勃発したきっかけは、サラエボでオーストリアの皇太子が暗殺されたことだった。
今回の金正男暗殺事件も、米中両大国の思惑が交錯し、アジアに大きな波紋を広げるリスクを抱えている。


by mnnoblog | 2017-03-04 08:04 | 国際

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