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カテゴリ:国際( 104 )

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  (日経新聞の記事より)

ハンガリーのオルバン首相の下で日増しに強まる「反リベラル民主主義」は、欧州連合(EU)の価値観と対立するものだ。

同氏はこのほど、海外資金で設立された大学への規制を強化した。
これにより、中・東欧では最高水準の大学院大学で、首都ブダペストにある中央ヨーロッパ大学(CEU)が閉鎖に追い込まれる可能性がある。

CEUは26年前、ハンガリーの共産主義体制が崩壊した後、同国出身の米著名投資家ジョージ・ソロス氏が設立した。
「開かれた社会」の推進者であるソロス氏は、反リベラルのオルバン氏には批判的だ。

オルバン氏は何年も、民主主義と法の支配に逆行する政策をとってきた。
難民を不当に扱い、EUの難民割り当て政策に反対することで、寛容と忍耐というEUの価値観を公然と無視してきた。

ここにきては、ハンガリー政府が進める減税や雇用創出にEUが反対していると非難し、よりあからさまにEUを攻撃しているように見える。

国民にはEU支持が根強い。
ハンガリーはソ連圏の崩壊以降、西側の機関に加盟することで大きな恩恵を受け、国民は欧州大陸全土で働ける権利を享受してきた。

これまで数百億ユーロにのぼるEU補助金を得てきたほか、地域間格差を解消するための多額の「構造基金」も2020年までに受け取ることになっている。

これまで、このやりたい放題の加盟国にEUは毅然と対応してこなかった。
26日、EU欧州委員会のティメルマンス第1副委員長は、ハンガリーの新教育法がEU法に抵触しないか精査するよう命じた。

今後、ハンガリー政府は説明を求められる可能性がある。

一方、ドイツのメルケル首相は、欧州議会の最大勢力で中道右派の欧州人民民主党(EPP)に所属するオルバン氏率いる「フィデス・ハンガリー市民連盟」をEPPから追放する動きを主導すると考えられる。

オルバン氏は16年、移民や難民はEU諸国の寛大な社会福祉と、域内の国境開放を悪用していると主張した。
だが、首相としてオルバン氏自身がEUから貴重な資金を搾り取っている。

オルバン氏の勝手な振る舞いと、東欧全域に広がる「反リベラル」の波を食い止めるため、EUはハンガリーに「罰」を与えなければならない。


by mnnoblog | 2017-05-05 08:28 | 国際
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(msn ニュースの画像と記事より)

高をくくってはならない。

朝鮮半島での武力行使の危険が現実味を帯び始めた。
核・ミサイル開発を止めなければ、北朝鮮への武力行使を含む「あらゆる選択肢」をちらつかせるトランプ米政権に対し、平壌は中距離弾道ミサイルの発射実験で応じた。

危機を回避させられるのは、米中両国しかないと考えがちだがそれは甘い。
なぜか。
中国こそ北朝鮮を説得できる唯一の国という期待は、過去の「虚構」にすぎないからだ。

「北のメンツを立てながら核を放棄させられる可能性はゼロだ」こんな見立てをするのは、中国の安全保障問題の第一人者、南京大学の朱鋒・国際関係研究院長。
来日中の17日、都内で筆者のインタビューに答えた。
彼はその理由として、金正恩委員長の父親の金正日氏との違いを指摘する。

「父親は米中日ロなどの大国が共同で核開発に反対する中、核兵器保有は難しいと判断をした。一方、正恩は現実から遊離した独善的な行動に走っている」
と、あからさまに批判する。

「有名無実」とはいえ、中国と北朝鮮は法的には軍事同盟関係にある。
学者という「民間の立場」ながら、「友好国」指導者への遠慮のない評価。
それは中朝関係が想像以上に冷え込み、北への説得を期待される北京も、実は成す術のない「お手上げ状態」にあることを物語る。

東アジアの平和を脅かす米朝のチキンゲーム。
トランプも金正恩も、先にゲームを降りれば「弱い指導者」として権威を失墜するから、簡単には譲歩できない。

米原子力空母カールビンソンはまもなく、朝鮮半島に接近しゲームは一層緊迫する。
朱氏にあえて「北のメンツを立てる方策は?」と問うたのは、1994年の核開発危機の際、周辺国は、北朝鮮に軽水炉と重油燃料を提供する「朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)」という枠組みを提供し、核開発を放棄させる「ニンジン」を差し出したからだった。

中国は、米国の軍事攻撃を不可避と見ているのか。
やはり来日中の于鉄軍・北京大学国際戦略研究院副院長に聞いた。
于氏は「北が核実験を強行する可能性は否定できない。そうなれば米軍は北の軍事施設へのピンポイント攻撃を実行する恐れがある」とみる。

朝鮮戦争以来の危機、最悪のシナリオだ。
「米国が軍事攻撃したら中国はどう出るのか」。
そう質問すると、しばらく答えあぐねた末、于氏はこう答えた。

「その場合、中国内で意見が割れる恐れがある。北朝鮮と米国のいったいどちらが北京にとって本当の脅威なのかという意見の違いがある」

これまた想像するに恐ろしいシナリオだ。
仮にそれが、北京の指導部の意見分裂を意味するとすれば、戦争状態が放置される危険すらあるからだ。
先の朱氏にも、「第二次朝鮮戦争」の見通しを聞いた。

「朝鮮戦争へ中国が介入する可能性は低い。
米中双方ともに戦争をしたくないのが共通認識。
戦争の可能性を完全に排除できないのは、東アジアはまだ冷戦構造を引きずっているからだ」

と、比較的楽観的な答えが戻ってきた。
彼はさらにこう強調した。

「中国の認識変化にぜひ注目してほしい。
北の核は、中国にとっても重大な脅威という認識を持っている。
習近平指導部は明らかなシグナルを発している。

かつてこんな見方をすれば売国奴とののしられたものだ」中朝関係と言えば血と血で結ばれた「血盟関係」と形容されてきた。
それは共産主義封じ込めの米戦略打破のための「イデオロギー的絆」とされる。
しかし、中国側は北朝鮮が初の核実験を実施した2006年ごろから「北は言うことを聞かない。影響力を行使しろというがそんな影響力はない」と公言するようになった。

中国式の改革開放政策に北朝鮮の生き残りの道を見いだした張成沢(金正恩の叔父)の処刑によって、双方の関係は国益と国益がせめぎ合う「普通の国と国」の関係になった。

悲観的見通しの中、北朝鮮問題で協調する米中関係は、わずかに明るい材料と言える。

4月初めの首脳会談で2人は「北朝鮮の核開発は深刻な段階に達した」との認識を共有し、核開発抑制のために両国が協力を強化することで一致した。
一時は、中国に喧嘩腰だったトランプ大統領だが、「習主席は協力したがっていると思う。北朝鮮から中国へ輸出されるはずの石炭を乗せた船はすでに返されている。中国はほかにも多くの措置も行うだろう」(4月13日)と語った。

トランプにしても、「頼り」は北京以外にないのだ。
首脳会談に先立ち3月北京を訪問したティラーソン国務長官は「対抗せず、衝突せず、相互尊重でウィンウィン」の「新型大国関係」に基づき米中関係を構築すると述べた。
16日には楊潔チ・国務委員がティラーソン氏と電話会談しており、米中連携は水面下で機能している。

東アジア150年の近現代史をみると、国際政治の主役の交代は鮮明である。

日清・日露戦争はともに朝鮮半島の権益をめぐる争いであり、主役は日本とロシアだった。


120年後の現在、ホットスポットは依然として朝鮮半島と変化はないが、中国と米国が日ロに替わる主役になった。

日本の影響力は、94年危機と比べても一段と下がったことを我々は自覚した方がいい。


朱氏は「中米両国は首脳会談で良いスタートを切り、協力関係が始まった。米中ともストロングマンが主導権を握っているのは重要。米中だけでなく、日本と韓国を巻き込んで核問題に対処したい。われわれの指導者は決意と実行力を持っている」と。


平壌に核実験を回避させ、危機を乗り切るのに成功すれば、トランプ登場で揺れた米中関係は、今後国際政治を左右するコアな関係になるだろう。



by mnnoblog | 2017-04-20 08:53 | 国際
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  (NEWSWEEK の画像と記事より)

<3月下旬のロシアの反腐敗デモの規模は、世界を驚ろかせた。
ロシア人は腐敗には慣れっこだと思われていたからだ。
厳罰の可能性もあるなか、彼らを動かしたのは何だったのか>

3月下旬のロシアの抗議デモの規模は、2011年の反政府デモ以来で最大だった。

3月26日、数万人の人々がウラジーミル・プーチン政権の腐敗に抗議するため通りに集結。
約1,500人が拘束され、多くが起訴された。80以上の都市で抗議デモが開かれた。

プーチンは4日間の沈黙の後、この抗議デモを2011年の「アラブの春」や2014年のウクライナ危機にたとえ反政府デモへの危機感を示した。
アラブの春を「許されざる抗議デモ」と呼び、「血を見る抗議集会は政権転覆の危機につながりかねない」と警告。
隣国のウクライナでも2014年の大規模デモが政変につながったと言った(2014年ウクライナ騒乱)。

世界も驚いた。
政府に対する不満をあらわにすれば弾圧されるロシアでは、人々はデモに疲れ、じっと不満に耐えるものだと思われていた。
政府が許可しない抗議デモへの参加は法的にも制限されている。

そこへ数万人が集まったのだ。
きかっけはあるドキュメンタリー動画だった。
汚職告発団体「反汚職基金」が一年かけて、前大統領のドミトリー・メドベージェフ首相が資産家たちから多くの高級不動産や贅沢品の提供を受けていた実態を調査し、告発したもの。
出てくる豪邸やブドウ園、農場、ヨットなどは、書類上は他人名義や慈善団体への寄付とされている。
メドベージェフは頻繁にこれらの施設を利用していたという。

反汚職基金のリーダーで野党指導者のアレクセイ・ナワルニーは、この動画を3月初旬にYouTubeで公開。
動画公開後、メドベージェフはロシアで最も敵視される政治家になった。

プーチンは、警官隊や機動隊で平和的デモを鎮圧したことに対する外国からの批判を「政治的なロシアへの圧力」と切って捨てた。
常に命令と受け止められるプーチンのこの言葉の意味は、今後もデモ参加者は容赦なく起訴する、ということだ。
デモ参加者は誰もが悪者とみなされ、捜査官や裁判官も彼らを危険な犯罪者として扱うことになる。

今回のデモは、ロシア人の「デモ疲れ」は誇張で、腐敗には慣れっこというのも嘘だということを証明した。

さらに根本的な教訓は、ロシアのエリート階級と大衆との格差が、反政府運動が盛り上がった6年前、あるいはソ連邦が崩壊した26年前と比べてもほとんど変わっていないということだ。

世論調査で政府やプーチン大統領について聞かれて表向きは何と答えようと、根底では自分たちが置かれた状況と権力者たちの暮らし向きの格差を理解しているのだ。

そしてもちろん、支配階級の不正を「自然現象」として無視することをまだ知らない若い世代がいる。
3月26日の集会に大勢の若者が参加したことは、体制側と反体制側双方を驚かせた。18歳の若者たちが反汚職運動に身を投じ始めたらいったいロシア社会はどうなるのか、誰にも想像がつかないのだ。

体制的には、ロシアの根本は何も変わっていない。
ロシア政府の外には、自分の意見を主張したい人々のための政治的手段は存在しない。
何か共通のテーマが浮上したときに通りに繰り出すしか、政府にメッセージを伝える方法はない。
それは逆に、抑えつけられてきたマグマがいつ噴き出すかわからないということでもある。


by mnnoblog | 2017-04-14 08:23 | 国際

「シリア内戦」の全貌

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  (現代ビジネスの画像と記事より)

「21世紀最大の人道危機」と言われるシリア「内戦」――。

2011年の「アラブの春」の一環として始まったこの紛争も今年の3月で丸5年を迎え、既に総人口約2100万人の半数以上が国内外への避難を余儀なくされ、27万とも47万とも推計される人びとが命を落としている。

「内戦」の泥沼化、そして、あらゆる「普遍的価値」を蹂躙する過激派組織「イスラーム国(IS)」の出現。
今日のシリアには、「アラブの春」後の中東の「絶望」を象徴する終末的風景が広がっている。

シリアでは、なぜ「アラブの春」が「内戦」になってしまったのか。
その「内戦」は、なぜ泥沼化したのか。
なぜISは生まれたのか。
そして、シリアはどこに向かおうとしているのか。

シリアは、1946年のフランスの植民地支配から独立後、宗教に基づかない近代西洋的な国民国家を範とする国造りが行われた。

現在のアサド政権の成立は、1970~71年に起こったクーデタにまでさかのぼる。
2000年に「先代」ハーフィズの後を襲うかたちで次男のバッシャールが大統領に就任し、実に40年以上にわたってアサド一家による独裁政治が続いていた。
市民の不満は、軍や治安部隊、秘密警察によって監視・抑圧されていた。

こうしたなか、2011年3月、「アラブの春」がシリアにも飛び火した。
チュニジアとエジプトでの政変を受けて、シリアでもアサド政権に対して市民が政治改革を要求する声を上げたのである。

これに対して、アサド政権は憲法改正など一定の政治改革を行うこと市民の声に応えようとした。
しかし、市民による民主化運動が全国規模へと拡大していくなかで、軍・治安部隊を用いてこれを激しく弾圧した。

弾圧を受けた民主化運動のなかから、やがて武器を取る者が現れるようになった。
革命闘争の開始である。
これを象徴したのが、2011年9月の「自由シリア軍」の結成であり、その後も各地で無数の武装組織が生まれていった。

その一方で、民主化運動からは多くの市民が離脱していった。
市民のほとんどは、当然のことながら、戦闘の訓練など受けておらず、また、自分の命を危険に晒すほどの覚悟を持っていなかったからである。

その結果、シリアにおける「アラブの春」の民主化運動は、アサド政権の軍事的な打倒を目指す革命闘争へと変質した。
「アラブの春」の民主化運動に特有の「緩さ」――政治信条の違いや老若男女問わず、誰でも参加できる巨大な運動としての力――は失われ、一部の血気盛んな人びとによるアサド政権に対する軍事行動が目立つようになった。
こうして、シリアは「内戦」へと突入していった。

しかし、アサド政権は倒れなかった。

シリアの政権軍、とりわけ精鋭部隊は、アサド大統領の親族や側近に率いられた「家産化された軍」であった。
すなわち、政権が革命の危機に瀕したとき、その防衛のために市民に躊躇なく銃口を向けられる私兵部隊と化していた。

だとすれば、軍事力で優る政権軍が反体制諸派を圧倒することで「内戦」は早々に決着がつくはずだった。
しかし、実際には、反体制諸派はアサド政権に対する攻勢を強めていった。

なぜ、反体制諸派は政権軍と対峙し続けられたのか。
それは、次の3つのプレイヤーが、シリア国外から武器や資金を提供したからであった。

第1に、米国、欧州連合、トルコ、サウジアラビアなどの湾岸産油国である。
これらの諸国は、独裁者であるアサド大統領の退陣を求め、反体制諸派をシリアの「正式な代表」として政治的・軍事的に支持した。

第2に、シリア国外で活動してきた反体制派の諸組織である。
彼らは、アサド政権の反体制派に対する弾圧や取り締まりを逃れて、数十年にわたって欧州や中東の各国で細々と活動してきた。
「アラブの春」は、祖国への帰還と政権奪取のための千載一遇のチャンスであり、国内で蜂起した反体制諸派を支援した。

第3に、過激なイスラーム主義者である。
彼らは、独裁政治と社会の「脱イスラーム化」を行ってきた「不義の体制」であるアサド政権を打倒するために、世界中からシリア国内の反体制諸派に合流していった。

この3つのプレイヤーはそれぞれ異なる背景やイデオロギーを有しながらも、「アサド政権の打倒」で奇妙な一致を見せ、シリア国内の反体制諸派の勢力拡大を後押ししたのである。

反体制諸派の攻勢に伴い、アサド政権側の損害も大きくなっていった。

こうしたなか、国際政治において欧米諸国の影響力拡大を嫌うロシアと中国、また、中東政治でサウジアラビアと競合関係にあるイランが、それぞれアサド政権への支援を強めた。
さらには、レバノンのイスラーム主義組織・政党ヒズブッラー(ヒズボラ)が、アサド政権側で「内戦」に参戦した。

こうして、シリアでの「内戦」は国際的な代理戦争の様相を呈することになった。

つまり、国際政治では欧米と露中、中東政治ではサウジアラビアとイラン、そして、国内政治では反体制諸派とアサド政権という三層構造の対立図式が完成したのである。

その結果、シリア「内戦」の解決はいっそう困難なものとなり、戦局は膠着状態へと陥った。
その最たる象徴が、2013年8月末の首都ダマスカス郊外での化学兵器の使用事件に対する米国や英国の不干渉の決断であった。

長期化する「内戦」で消耗したアサド政権と反体制諸派の間の「漁夫の利」を得るかたちで急速に台頭したのが、「イスラーム国(IS)」であった。

「内戦」による混乱と破壊は、シリアをいわゆる破綻国家の淵へと追いやっていった。
中央政府による統治や国民としての一体感が失われていくなかで、国内外から参戦した過激なイスラーム主義者たちの存在感が増していった。
当初は「助っ人」であったはずの彼らは、反体制諸派の戦闘能力や組織規模を徐々に凌駕するようになった。

そして、その一部の組織が、破綻国家となったシリアの領土の一部を実効支配するようになり、2014年6月、同国北東部の街ラッカを「首都」とする「国家」の建国を宣言したのである。

ISの前身は、2003年のイラク戦争後に結成された「イラクのアル=カーイダ」である。
同組織は、イラク領内で「異教徒」の軍勢である米軍と「背教者」の政府である新政権に対する武装闘争を繰り返したが、戦後復興が進んでいくなかで徐々に衰退していった。

彼らを結果的に救ったのが、隣国シリアの「内戦」であった。
ISは、破綻国家となったシリアという新たな宿主を見つけ、そこに寄生し資金、武器、人員を獲得することで蘇生したのである。

なぜ、中東の内外からISに合流する者が後を絶たないのか。

そこには、ISが、豊富な資金を駆使した巧みなリクルートを行っていることの他に、混迷の色を深める「アラブの春」後の中東において、新たな秩序の青写真を見せることに成功している点が挙げられる。

その新たな秩序とは、彼らが理想とする「イスラーム国家」の建設であり、現行の国民国家とはまったく異なる統治の原理(イスラーム法による統治)と領域の設定(超領域的な国家建設)を特徴とする。

ISは、自由、人権、民主主義、さらには「世界遺産」といった現代世界における「普遍的価値」をグロテスクなまでに否定することで、その新たな秩序の「新規性」をアピールしている。

こうした過激主義は、平時であれば多くの人びとに支持されることはないだろう。
しかし、現実にはISへの支持者や参加者は増え続けている。
それは、「アラブの春」後の中東が政治的混乱していることだけではなく、「民主主義」や「市民の力」が政治や社会の諸問題を解決する力を失ってしまったことの証なのかもしれない。

ここで考えなくてはならないのは、今日の世界において、政治的な混乱は中東に限ったことではない、という事実である。
混乱と呼ぶほどではなくとも、差別や貧困などの社会問題が深刻化している国や地域は無数にある。

しかし、かつての冷戦期のように、これらの諸問題の解決を約束してくれる強力なイデオロギーも、「壁の向こう側」のユートピアも、もはや存在しない。

ISが提示する新たな秩序は、実際にはそれがディストピアであったとしても、いや、むしろ徹底したディストピアであるからこそ、民主主義、自由主義、資本主義の三位一体が席巻した今日の世界に対するアンチテーゼとしての魅力あるいは「魔力」を醸し出すことに成功している。
それが、中東だけではなく、世界の各地から共感者や参加者を獲得し続けている理由の1つであろう。

ISの台頭は、シリア「内戦」の三層構造の対立図式に停滞と変化の両方をもたらした。
停滞としては、アサド政権と反体制諸派にISを加えた「三つ巴」の複雑な戦局を生み出したことで、「内戦」解決のシナリオをいっそう混乱させた。

国際社会にとっての脅威はアサド政権ではなくISである、という認識が急速に広がったことで、アサド大統領の退陣を既定路線とする欧米諸国主導の取り組みが難しくなったのである。

アサド政権は、ISに対峙する自らを「対テロ戦争」の最前線を担うものとして正当化するチャンスを得ることとなった。

他方、変化としては、ISを共通の敵とする「三つ巴」の戦いの対立図式が顕在化したことで、結果的にアサド政権と反体制諸派、そしてそれぞれを支持するプレイヤーたちの間のデタント(雪解け)の兆しを生んだ。

特にアサド政権の存続を消極的に承認した、ないしはISとの戦いでの利用価値を見いだした欧米諸国は、それまでの反体制諸派への一辺倒な肩入れを見直し始めた。

この変化を象徴したのが、2014年8月に発動された米国主導の「有志連合」によるISをターゲットにした軍事介入であり、2015年7月のイランの核開発疑惑をめぐる同国と米国を筆頭とする6ヵ国との間の「包括的合同行動計画」の合意であったと見ることができよう。

シリア「内戦」は一体、どのように解決されるべきなのか。

実は、「内戦」開始から約1年後の2012年6月、関係各国が参加したジュネーヴでの国際会議が開かれた時点で、その大枠はつくられていた。

その大枠を一言で言えば、「内戦」は、特定の勢力の軍事的な勝利ではなく、シリアの「国民的対話プロセス」を通して政治的に解決するべきである、というものであった。

シリア人の、シリア人による、シリア人のための和平へのプロセスと言い換えてもよいであろう。

この大枠に基づく「内戦」解決に向けた営みは「ジュネーヴ・プロセス」と呼ばれ、2014年2月(ジュネーヴ2)、2016年1月(ジュネーヴ3)と2度にわたって国際会議が開かれてきた。
しかし、国連安保理常任理事国5カ国を含む関係各国による交渉はいずれも物別れに終わり、その結果、シリア国内での戦闘は続いた。

なぜ、ジュネーヴ・プロセスの交渉は決裂を繰り返したのか。

第1に、アサド大統領の処遇が争点化したことあった。
シリア人主導の政治的解決にアサド大統領自身が含まれるかどうかについて、プレイヤー間で意見の相違が見られるのは道理であった。

第2に、政治的交渉を有利に進めるために軍事的な優勢を確保したいという様々なプレイヤーの思惑があった。
誰もが相手の喉元に刃を突きつけた有利な状態で話し合いを始めたかったのである。

第3に、反体制諸派の足並みの乱れがあった。
彼らには、国内組と海外組の拠点の違い、世俗主義とイスラーム主義というイデオロギーの違い、民主化運動と革命闘争という目的の違い、政治的解決と軍事的解決という手段の違い――少なくとも4つの変数によるバリエーションがあった。
しかも、外国人戦闘員の大量流入や政治的・軍事的環境の変化によって、日々、様々な組織が離合集散を繰り返すような状況にあった。

ここまで見てきたように、シリア「内戦」は軍事的にも政治的にも膠着が続いてきたが、2015年9月末、それを破るゲームチェンジャーが現れた。
ロシアが、アサド政権の正式要請を受けるかたちで、シリアへの大規模な軍事介入を開始したのである。

軍事介入は「対テロ戦争」の名目で進められ、ターゲットはISやアル=カーイダ系のヌスラ戦線に限定するとされた。
しかし、実際には、欧米諸国が支援してきた反体制諸派の拠点も空爆の対象にされ、ロシア軍の圧倒的な火力による航空支援を受けたアサド政権の部隊は「失地」を次々に回復していった。

これに対して、欧米諸国をはじめとする反体制諸派の支援国は打つ手を欠き、ロシアの行動を事実上黙認した。
その背景には、2015年春頃から深刻化した世界的なテロリズムの拡散と難民・移民の急増があった。

特にその影響を強く受けた欧州は、シリア「内戦」の泥沼化に歯止めをかける何らかの手立てを必要としていた。
ロシアは、その欧州の「弱み」を突くかたちで、アサド政権への直接的な軍事支援を敢行したのである。

ロシアの参戦による軍事的な均衡の崩壊は、政治的な均衡をも揺るがすこととなった。
2015年11月、ジュネーヴ・プロセスのてこ入れのためにウィーンで国際会議が開かれた。

この会議では、米国、ロシア、欧州と中東の各国からなる「国際シリア支援グループ(International Syria Support Group、ISSG)」が結成され、アサド政権と反体制諸派の間の「国民的対話プロセス」のためのテーブルの準備が本格化した。

この会議は、それまで大きな争点となっていたアサド大統領の処遇についての言及がほとんどなかったという点で画期的なものとなった。
言い換えれば、反体制諸派を支援してきたプレイヤーたちがアサド政権に対して一定の妥協を見せたのである。

ウィーンで始まったこの取り組みは、2016年2月22日、米国のケリー国務長官とロシアのラブロフ外相の間で交わされた2週間の停戦合意として1つの実を結んだ。
アサド政権と反体制諸派との間の砲声が5年ぶりに鳴り止んだ。
また、3月14日には、ジュネーヴで中断していた国際会議での交渉が再開された(ジュネーヴ3)。

しかし、ジュネーヴ・プロセスの枠組みに含まれないISやヌスラ戦線といった「テロ組織」は戦闘を継続しており、また、アサド政権による「対テロ戦争」の名の下での軍事作戦も展開中である。

実は、この「対テロ戦争」の問題が、今後の「内戦」解決に向けた取り組みにおける1つの焦点となる。
交渉では、もはやジュネーヴ・プロセスを停滞させてきたアサド大統領の処遇をめぐる問題は後景に退き、むしろ反体制諸派の処遇、つまり交渉のテーブルに着くべき組織の取捨選別が課題となっている。

ISやヌスラ戦線が「テロ組織」と認定される一方で、アル=カーイダとのつながりを持つとされるシャーム自由人イスラーム運動やイスラーム軍といった複数の組織が反体制諸派の交渉主体の一部として名を連ねている。
アサド政権はこれらを「テロ組織」として排除することを求めているが、他方、反体制諸派を支持してきたサウジアラビアは交渉への参加に固執している。

この問題をさらに複雑にしているのは、これらのいわば「グレーな組織」が今や反体制諸派のあいだで軍事的にも政治的にも大きな影響力を持っていることである。
つまり、「グレーな組織」はアル=カーイダとつながっているかもしれないが、それを排除したときに反体制諸派は交渉主体として成立し続けられなくなるかもしれない。ジレンマである。

シリアで起こっているのは国内外のプレイヤーが関与することで国際化した「内戦」であり、国内政治、中東政治、国際政治の三層にわたる対立や憎悪を再生産している。

また、その「内戦」の泥沼化が、ISという鬼子を生み、さらには、難民・移民やテロリズムの世界的な拡散をもたらすことで、世界各地で治安の悪化や排外主義の台頭の原因となっている。

そのため、シリアにとっても、世界にとっても、シリア「内戦」の一刻も早い解決が求められている。
「絶望」が世界を覆い尽くす前に。 


by mnnoblog | 2017-04-13 08:51 | 国際
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  (BBC News Japan の画像と記事より)

ドナルド・トランプ米大統領は6日、シリア空軍基地へのミサイル攻撃を命じたと記者会見で明らかにした。

4日にシリア北西部イドリブ県で、反政府勢力支配地区に対して化学兵器の使用が疑われる攻撃があったことを受けての対応という。
ホワイトハウス報道官はイドリブ攻撃について、シリア政府が神経ガスのサリンを使用したものと思われると言明した。

トランプ大統領は、4日の爆撃機が出発したシリア空軍基地への攻撃を命じたと会見で述べ、シリア紛争を終わらせるため「すべての文明国」の協力を呼びかけた。

国防総省は、アサド政権とシリア軍を支援するロシア政府には、ミサイル攻撃を事前に通知したと説明している。

国防総省によると、シリア時間7日午前4時40分(日本時間同日午前10時40分)、東地中海の洋上にいる海軍駆逐艦ポーターと同ロスから、トマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラート飛行場へ発射したと説明した。
米国は、イドリブを攻撃した戦闘機はこの飛行場から出発したものとみている。

標的としたのは飛行場の格納庫、飛行機、保管区域、武器庫、防空システムとレーダーで、「(アサド政権が)二度と化学兵器を使用しないよう抑止」することが爆撃の目的だと国防総省は説明している。

シリア国営テレビは、「アメリカの攻撃行為」が「複数のミサイル」でシリア軍基地を標的にしたと表明。
これ以上の詳細は明らかにしなかった。

米南部フロリダ州の私邸「マール・ア・ラーゴ」で会見したトランプ大統領は、シリアのバシャール・アル・アサド大統領は「独裁者」で、「罪のない市民に恐ろしい化学攻撃を実施した」と非難。

「私は今晩、シリアの殺戮と流血を終わらせ、あらゆる種類とあらゆるタイプのテロリズムを終わらせるため、我々と協力するようすべての文明国に呼びかける」とトランプ氏は述べ、「アメリカが正義のために闘い続ける限り、最後には平和と調和が勝つと我々は信じている」と強調した。

シリア・イドリブでの攻撃では、子供を含む多数の市民が死傷。
呼吸困難や瞳孔の縮小、口から泡を吹くなど、化学兵器攻撃を疑わせる症状を見せていたと現地目撃者は話している。

<解説> ジョン・ソープルBBC北米編集長

政策がこれほど大幅かつすぐに変わるのは珍しいし、これほど速やかに実施されるのも珍しい。


トランプ大統領が就任した時、シリアの大統領は過激派組織のいわゆる「イスラム国」との戦いで役に立つ同盟相手だとみられていた。

オバマ政権が推進したシリアの体制変化に関する会話は、いっさいストップした。


しかし化学兵器による攻撃が、すべてを変えた。

攻撃から2日しないうちに米政府はアサド大統領への立場を変え、標的を特定し、攻撃したのだ。


これが一度きりの単発報復なのか、それともアサド政権に対するもっと腰を据えた対応の始まりなのかは分からない。

シリアの強力な同盟国ロシアと、米国の関係が今後どうなるのかも分からない。



by mnnoblog | 2017-04-07 14:00 | 国際
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  (NEWSWEEKの画像と記事より)

トランプ政権のティラーソン国務長官が来日し、安倍首相、岸田外相と主として北朝鮮問題について会談するようです。

北朝鮮は、安倍=トランプ会談にタイミングを合わせてミサイル発射を行って以降、ミサイル発射を繰り返しています。
しかも発射実験は「在日米軍基地を攻撃する任務を負った部隊」が指揮したなどという発言もあり、日米を同時に挑発しているとしか言いようがありません。

その一方で、クアラルンプールにおいて、金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男氏が殺害される事件も起きています。

北朝鮮は、死亡したのは別人だと頑強に否定していますが、正男氏は長年中国が北朝鮮のリーダーの代替候補として「温存」していたと言われた人物ですから、金正恩政権が中国などから「政権交替」を迫られるのを防止、あるいは拒否するメッセージとして、殺害に及んだという見方はできます。

そんな中で、韓国では朴槿恵・前大統領が罷免され、5月に出直しの大統領選が行われることとなりました。

後任の大統領は、野党の「共に民主党」系の候補(複数)をはじめとした候補たちの間で争われるわけですが、選挙後に安定した政権ができるのかは不透明な情勢です。

これに加えて、米韓による「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」配備に対して中国が強く反発し、中国と韓国の関係は急速に悪化しています。

このような状況下、日本としては「朝鮮半島有事」に備えなければならないわけですが、その際に最も日本として警戒しなくてはならない点が1つあります。

それは「日本を仮想敵国とする求心力のもとに統一国家が成立する」という事態です。

韓国の人々はその誇りにかけて、再統一時を実現したいと思っている一方で、これを可能にする経済力は韓国には足りないことも痛いほど感じています。
また、仮に実現できずに、不平等な形で北の住民との合邦を行えば、統一後の社会が著しく不安定になることも、長年の検討の結果、韓国の政府や知識人たちは覚悟しています。

仮に、このような北の住民を公平に遇するような「膨大なコストのかかる統一」を実行すれば、現在の韓国の経済では支えられないおそれがあり、せっかく再統一された朝鮮半島は、内部に大きな不安定要因を抱え込むことになります。

そこで、日本を敵視することで国家の求心力、国論の統一を図ろうという為政者が登場する可能性は、残念ながら否定できません。

そうなれば、日本はバランス・オブ・パワーを維持するために、経済的にも政治的にも膨大なコストを払わざるを得ないことになります。

日本国内の世論は割れ、社会も不安定化するかもしれません。
産業の国外流出は加速するでしょう。
経済の停滞に苦しんでいる日本にとっては大きなダメージになります。

そう考えると、日本の戦略としては以下の2点が重要になってきます。


1点は、北朝鮮という国を何とかもう少し維持してもらい、国家の崩壊による性急な統一という悲劇を回避することです。

仮に、今日の時点で統一は不可能、そのように国際社会と韓国が理解しているのであれば、北朝鮮に関しては「何らかの形で安定化」しつつ「緩衝国家として残す」ことが具体策になります。


2点目としては、まず日米が腹を割って話し合い、不必要な米国側から北朝鮮への挑発を止めさせるべきです。

その上で、日米の立場が完全に擦り合わせられたところで、中国を入れて日米中で合意形成を行うことです。

そして、韓国の新政権にもその政策を受け入れてもらわなければなりません。


トランプ政権下のアメリカが極端に内向きになっている現在、日本はよりハッキリした戦略を持って動くべきです。

間違っても、日米中の3カ国が韓国の新政権と良い関係を築けず、韓国を孤立させて北朝鮮に接近させるようなことがあってはなりません。


今後の対韓国外交は、日本にとっても緻密さと粘り強さが求められる特殊な局面になるでしょう。

例えばですが、現時点では駐韓の長嶺大使が一時帰国中ですが、新大統領が決まった時点で間髪を入れずに再赴任して関係修復を図る(もっと早期に戻るという策もありますが)など、事態に対してイニシアティブを取りつつ、戦略的に動くことが重要だと思います。



by mnnoblog | 2017-03-29 08:45 | 国際

不確実性増す欧州情勢

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  (ロイターの画像と記事より)

英国は今週、EU基本条約(リスボン条約)第50条を発動させ、欧州連合(EU)離脱に向けた第1歩を踏み出す。
その後、スコットランドの独立を巡る2回目の住民投票も行なわれるだろう。
今や、北アイルランドが英国を離脱して、アイルランド共和国と合流する可能性さえゼロではないという憶測が広がっている。

15日のオランダ総選挙では、ヘルト・ウィルダース党首率いる極右政党の自由党が最も多くの票を獲得する可能性がある。
主流派寄りの政党連立により政権獲得は阻まれるだろうが。

フランスでも、マリーヌ・ルペン党首の極右政党・国民戦線が、4月23日に行なわれる大統領選挙の第1回投票において第2位となることはほぼ確実だ。
ただし5月7日の第2回投票では中道派のエマニュエル・マクロン前経済相がルペン党首を破る公算が大きい。

東方、北方の欧州各国は、自己主張を強めるロシアへの懸念が広がっている。
今月、スウェーデンは2010年にいったん廃止された徴兵制の復活を発表した。
想定されるロシアからの脅威に対する防衛力強化が狙いだ。

フィンランドはハイブリッド戦争への反撃を狙いとする軍事演習を実施している。
バルト海沿岸諸国では、北大西洋条約機構(NATO)が冷戦期以来となる最大規模で部隊を配備している。

欧州統一通貨であるユーロ危機も解消していない。
実際、2008年の金融危機以来、悪戦苦闘を続けてきたユーロは、今や新たな不安定期に入りつつあるかもしれない。

早ければ6月にも予想されるイタリアの選挙において、ユーロ圏残留に批判的な政党に権力バランスが傾いたとしても不思議はない。
長年続く低成長と失業増大がユーロのせいだと考えるイタリア国民は多い。

とはいえ現状否定派が予想するほど、あらゆるものが急速に崩壊しているわけではない。

ドイツでは、なるほど極右政党の「ドイツのための選択肢」が、強い不満を抱えた旧東独地域を中心に急速に成長している。
だが、同党が9月の連邦選挙において確かな政治権力をつかむ可能性は依然として低い。

これは、欧州の極右がどれほど苦戦しているかを思い起こさせる。
確かに、英労働党の長引く苦境など、欧州の左派は依然として混乱している。
それても、本格的な右派と呼べる政権が支配する国は、欧州ではハンガリーとポーランドだけだ。
その2カ国の右派政権でさえ、往々にして、多くの人が楽勝と考えていた戦いで苦戦してきたのである。

欧州は解体しつつあるわけではないにせよ、半恒久的な危機状態にあるように見える。

問題の大半はリーダーシップにあるように思われる。
国家と地域の双方レベルで、欧州指導者は、信頼性、支持率、そして(最悪なことに)政治的な正統性という点で危機に直面しているように見える。

ロシアのプーチン大統領は、こうした欧州の不安定な状態に喜び勇んでつけ込んでくるだろう。

欧州と米国双方の国家安全保障部門の主流派には、ロシアによるシリア介入は、部分的には、難民危機を煽ることで欧州政界をギリギリまで圧迫しようという意図によるものだという考えが多く見られる。

米国の情勢は、こうした欧州の不確実性に拍車をかけたと言える。
トランプ大統領が先月、ロイターとのインタビューで、EUとその機構に対する支持を表明したことは、一部の欧州ウォッチャーを驚かせた。

米国外交担当者の主流派の多くはこうした見解を共有している。
欧州解体がもたらす結果を恐れているだけかもしれないが。
しかし、トランプ大統領の周辺には、特にスティーブ・バノン首席戦略官などのイデオロギー信奉者のように、EUを自分の世界観における邪魔者と見なして、その失敗を心待ちにする者もいる。

ロッテルダムでのトルコ系住民集会に参加しようとしたトルコ閣僚の入国をオランダ政府が拒否したことで、トルコとオランダ両政府の対立は激化している。
トルコのエルドアン大統領はオランダ政府をナチスに例えるまで関係が悪化しているが、これによりオランダ総選挙でのウィルダース自由党党首への支持はいっそう高まると見られている。

真の問題は、こうした話が完全に自己実現的なものになるかどうかだ。
今のところ、欧州の機構には明らかな崩壊の兆しが見られる。
だがその抵抗力は、少なくともこれまでのところは、依然として印象的だ。

現在、圧力を受けているEUやNATO、統一通貨、及び各国の基本的な政治制度や仕組みは、不完全なものだ。
だが、いくつか目をみはるような成果も挙げてきた。
特に60年以上にわたって欧州大陸で平和を維持したこと、そして(少なくとも、大体において)効果的な福祉と人権を住民に与えてきたことである。

欧州のリベラルな民主主義は、往々にして偽善的であり、ときには無力だ。
だが、EU諸国の市民はおおむね、ここ数十年にわたって、特に国家権力の暴走など、いくつかの非常に悪い事態を味わうことなく過ごしてきた。

欧州は確かに、他者を暖かく迎え入れる大陸ではなくなりつつある。
特にセルビアなどEUの境界に位置する国で厳しくなる一方の状況に置かれている難民はそれに気づいている。

状況がこの先どうなっていくかは予想しがたい。
欧州統合の仕組みが最善の希望ではあるが、各国が自らを防衛するという点において独自の動きをとるとしても、それを責めることはできない。

欧州は何とかして、事態が見かけほど悪くはないことを自らに納得させ、今後に向けて何か楽観的な針路を見つけなければならない。
さもなければ、誰も思い描きたくないほどひどい状況へと陥っていく恐れがある。


by mnnoblog | 2017-03-16 08:45 | 国際
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  (日経新聞の画像と記事より)

韓国の憲法裁判所は10日、国会が可決した朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追を妥当と認定し、大統領は即時失職した。

朴氏が友人に便宜を図った行為を法治主権違反と認定した。
大統領の罷免は韓国の憲政史上初めて。

5月に大統領選を実施し、次の大統領を決める。
それまで黄教安(ファン・ギョアン)首相が大統領代行を続けるが、韓国は外交や安全保障などで課題が山積しており政情混迷が一段と深まりそうだ。

弾劾は憲法裁判官8人の全員一致で認定した。

憲法裁は、朴氏が友人の崔順実(チェ・スンシル)被告の利益のために大統領の地位と権限を乱用したと認定した。
崔被告が実質支配した財団の資金集めに朴氏が協力し企業の財産権と経営の自由を侵害したほか、国家機密を含む大統領文書を流出させた行為が国家公務員法の守秘義務違反にあたるとした。

李貞美(イ・ジョンミ)所長代行は弾劾認定の理由について「大統領の行為は否定的な影響が重大だ。
罷免することで得られる憲法守護の利益が圧倒的に大きい。
大統領の違憲・違法行為は国民の信任に対する裏切りにあたる」と説明した。

韓国憲法は大統領が罷免された場合、60日以内に大統領選を実施すると定めている。
直近の世論調査では、革新系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が、次期大統領を巡る支持率で他の候補を大きくリードする。

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3/31,日経新聞
韓国検察は31日、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を収賄などの容疑で逮捕した。
最大財閥のサムスングループと朴政権の「政経癒着」の解明に全力を挙げる。


by mnnoblog | 2017-03-10 12:54 | 国際
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  (Newsweek の画像と記事より)

弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射した北朝鮮だが、対するトランプ米政権では「あらゆるオプション」を検討しているという。
その中には、韓国に戦術核兵器を再配備するというショッキングな戦略も含まれていた。

まだ検討段階であり、現時点では実現する可能性は低いと見るべきだが、それでもショッキングな話である。

戦術核兵器は、戦場において通常兵器の延長として使用することが想定されているものだ。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)など、敵国の人口密集地や産業集積地、軍事施設の壊滅を狙う戦略核兵器は、使ったらたちまち全面核戦争になり、人類が存亡の危機に立たされる。
だから、使うに使えない。
そこで、よりコンパクトな「使える核兵器」として開発されたのが、戦術核兵器なのである。

では、このような物騒なシロモノを韓国から北朝鮮に向けることで、金正恩体制の核開発を抑え込むことはできるのだろうか。
筆者は、難しいと考える。

まず、中国とロシアが猛反発するだろう。
とくに中国は、米韓が北の弾道ミサイルに対抗して最新鋭高高度迎撃システム「THAAD(サード)」を在韓米軍に配備しようとしていることに激怒。
自国における韓国企業のビジネスや中国人の韓国観光を妨害するなど、実質的な「経済制裁」に動き出している。
戦術核兵器の韓国配備となれば、反発の強さはこの比ではないだろう。

そうなれば、国連安全保障理事会の足並みは大きく乱れ、対北朝鮮制裁の網に次々と穴が開くことになるはずだ。

次に、韓国社会は「核戦争」の心理的負担に耐えられるのか。
2015年8月、自国兵士が北朝鮮の仕掛けた地雷に吹き飛ばされる様を見せつけられた韓国の世論には、「一戦も辞さず」との気分が少なからずあった。

ただしそれは、北朝鮮の核・ミサイル開発が2016年に大きく進展する前のことであり、朴槿恵政権がスキャンダルに瓦解し、政治が国民の信頼を失う前のことだった。

国論が完全に分断された状況下で、韓国の政治が戦争を、それも核戦争を想定することなどとうてい不可能だ。

ここで認識しておくべきなのは、われわれが暮らす民主主義国家と、北朝鮮のような独裁国家の違いである。
韓国に戦術核兵器を配備しよう、などという計画が動き出したら、多くの人々が激しく反発し、大規模なデモで社会が騒然とするかもしれない。

しかし、独裁国家は民主主義国家と異なり、国民の合意など必要とせず独裁者のトップダウンで動くから、より極端な行動に出るのが容易なのである。
ということは、破滅的な「核の先制パンチ」を繰り出すのも、独裁国家である可能性が高くなる。

冒頭で触れたニューヨークタイムズの記事によれば、米国のオバマ前政権はサイバー攻撃を駆使し、北朝鮮の弾道ミサイルを無能力化する取り組みに途中まで成功したという。
しかし、結果的には失敗した。
外科的な方法で北朝鮮の核・ミサイル開発を挫く余地は、ほとんどなくなっているのだ。

残された方法は、北朝鮮の体制を変更するということだ。
それも内部からの変化によってである。
そのように言うことができるのは、文字通り命がけで外国の情報と接しつつ、北朝鮮国民がその内面で起こしている自由への意識の変化が、近年の北朝鮮情勢における(我々の側にとっての)唯一肯定的な変化だからだ。

そのために、関係各国にできることはたくさんある。
たとえば、中国当局が北朝鮮に協力し、脱北者を強制送還するのを止めさせることだ。

それをするだけで、北朝鮮国民と外部世界との接点が増えて、北朝鮮国内の変化を誘う余地も大きくなる。

もちろん、北朝鮮国内に変化を起こすのは大変な取り組みだ。
時間も予算もかかる。
しかし日米韓などの主要国は、現実的に言って金正恩体制と戦争も出来ず取引も出来ない状況にある。
ならば国内の変化の誘発はいずれやるべきことなのだから、どうせなら今すぐ始めた方が良いだろう。


by mnnoblog | 2017-03-08 08:13 | 国際
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  (ロイターの画像と記事より)

年金生活者のディミトラさんは、食料配給に頼る生活にまで落ちぶれるとは想像もしていなかった。
今月は、コメ、パスタ2袋、ひよこ豆1パック、デーツ(ナツメヤシ)と牛乳1缶を受け取った。

かつては赤十字の給食施設で生活困窮者の支援に当たっていた73歳のディミトラさんは、ギリシャで増加している生活困窮者の1人だ。

数十億ユーロを投じたギリシャ救済から7年、貧困の状況はまったく改善されていないどころか、欧州連合(EU)のどの国よりも悪化している。

ローバル金融危機とその副次的な影響により、ユーロ圏の4カ国は国際融資団に頼らざるをえなくなった。
アイルランド、ポルトガル、キプロスはいずれも救済を受けたが、救済が終わった後、これら諸国の経済は成長を再開した。

だが2010年にいち早く救済を受けたギリシャは、その後も3次にわたる救済を必要とした。

EUと国際通貨基金(IMF)が供給した救済資金により、ギリシャは破綻を免れたが、国際債権団が課した条件である財政緊縮や改革政策の影響もあって、景気後退は本格的な不況へと転じてしまった。

世論調査での支持が低迷する左派主導政権を率いるギリシャのチプラス首相は、追加支援に反対している債権団との長期交渉の最新段階において、ギリシャ国民の苦境を大義名分にしようと試みた。

「欧州の名の下に略奪を受けた国家に対して、そしてこれほど多くの犠牲を払い、今も払い続けている国民に対して、私たちは皆、注意を払わなければならない」とチプラス首相は今月語った。

巨額の救済資金の多くは、過去の債務の返済に充てるための新規債務という形になっている。
だが、生活水準の崩壊の責任は誰にあるかはさておき、EU統計局からの貧困状況を示す数値には驚かされる。

ギリシャはEU内の最貧国ではない。
貧困率はブルガリアとルーマニアの方が高い。
ギリシャは、この2国からさほど差のない第3位にある。
EU統計局のデータによれば2015年、ギリシャ全人口の22.2%が「物質的に深刻に困窮」している。

また、世界金融危機が発生した2008年以降、旧共産圏のバルカン諸国において貧困率の数値が低下している(ルーマニアの場合は約3分の1低下した)のに対して、ギリシャの貧困率はほぼ2倍に上昇した。
この時期、EU全体の水準は8.5%から8.1%に低下している。

こうした統計が示す状況は、ディミトラさんが毎月の配給を受けるアテネが運営するフードバンク(無料給食施設)のような場所に色濃く反映されている。

ここでは、何十人ものギリシャ国民が、配給を受けるためのチケットを握りしめて粛然と待っている。

皆、月約370ユーロという貧困ライン以下の生活にあると登録された人々だ。


このフードバンクの登録者は約1万1000世帯(約2万6000人)で、2012年のわずか2500世帯、2014年の6000世帯から大幅に増加している。

約5000人は子どもだ。


ここにある倉庫の棚や冷蔵庫の多くは空だ。フードバンクによる配給の内容は支援企業からの寄付次第だが、これらの企業もやはり経営に苦しんでいる場合が多い。


経済開発協力機構(OECD)などの国際機関は、ギリシャ政府に対し、貧困や格差対策を優先するよう促している。


失業率はピーク時の28%から23%へとわずかに低下したが、依然としてEU内で最悪の水準に留まっている。

危機が始まって以来、ギリシャ経済は4分の3の規模に縮小し、何千社もの企業が倒産した。


今年は経済が上向くのではないかという期待が強いものの、先週発表されたデータでは、2四半期連続で成長が続いたあと、10─12月期には再び後退に転じた。

生活水準の改善となると、これまで以上に遠い夢だ。


経営者団体のGSEVEE及び世論調査会社マルクの調査結果によれば、昨年は75%以上の世帯で所得が大幅に減少した。

少なくとも1人の失業者を抱える世帯は全体の3分の1、食費を削らざるを得なかったと回答した世帯は40%に及んだ。


グリーク・オンブズマンによれば、水道・光熱費の支払いに苦しむ人の数が増えているという。


「誰もが苦しんでいる。すべてのギリシャ人が」。

ギリシャ正教会が運営する給食施設でボランティアとして働く61歳の元教師Eva Agkisalakiさんはそう漏らす。


彼女には年金受給資格がない。救済プログラムに基づいて定年退職年齢が67歳に引き上げられたときに契約が切れており、次の仕事を見つけられなかったからだという。

やはり国際債権団が要求する改革に基づいて、夫の年金は980ユーロから600ユーロに削減されたが、その一部は息子や娘の家庭への仕送りに回している。


ボランティアの見返りとして、彼女は給食施設からの配給を受け取り、それを失業中の娘や息子と分け合っている。


「私たちは何もしていない」。

「ただ生きているというだけ。ほとんどのギリシャ人は、ただ生きているだけだ」と彼女は語った。



by mnnoblog | 2017-03-06 08:10 | 国際

のほほんと---


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