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カテゴリ:防衛( 27 )

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  (NHK NEWS WEBの画像と記事より)

東京・新宿区の防衛省のグラウンドに展開している、迎撃ミサイル「PAC3」。
北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次ぐなか、日本国内に落下物があった場合に備えています。

北朝鮮の弾道ミサイルの能力は発射のたびに向上していると見られていて、政府・与党内では迎撃態勢を強化すべきだという声が上がっています。

日本の迎撃ミサイルシステムはどうなっているのか、そして、どのような課題があるのか。防衛省での最新の研究状況なども含めて、政治部の中村大祐記者が解説します。

「北朝鮮の核・ミサイル開発は、『新たな段階の脅威』だ」
安倍総理大臣が、去年の9月ごろから、国際会議の場や国会などで繰り返し使っていることばです。

北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射は、去年から急激に増加しており、ことし6月までの1年半で、核実験は2回、発射した弾道ミサイルは30発以上に上っています。

日本の領域に落下したことはないものの、日本の排他的経済水域やその周辺への落下も相次いでいます。
ことし3月には、4発が南北に80キロ程度のほぼ等間隔で日本海に落下し、そのうちの1発はこれまでで最も日本の領土の近い、能登半島の北北西およそ200キロの海域に落下したと推定されています。

発射方法も移動式発射台や潜水艦など多様化させていて、ことし5月には、初めて2000キロを超える高度までミサイルを到達させました。

日本の迎撃態勢はどうなっているのでしょうか。

日本は現在、日本海に展開するイージス艦に搭載された迎撃ミサイル「SM3」と、東京・新宿区の防衛省などに配備されている迎撃ミサイル「PAC3」を組み合わせた2段階の態勢をとっています。

大気圏の外を飛しょうしている段階で、日本海のイージス艦が狙い、撃ち落とせなければ、全国に配備された34基のPAC3で破壊する計画です。

では、万が一、北朝鮮の発射したミサイルが日本国内に落下してきた場合、本当に撃ち落とすことはできるのでしょうか。
この疑問に防衛省の担当者は「具体的な態勢を明らかにすることはできないが、ミサイル防衛は着実に整備が進められており、万全に対応できるので大丈夫だ」としています。

ただ一方で、防衛政策に詳しい国会議員は「イージス艦は、北海道から沖縄までをカバーするために必要な数が展開されておらず、PAC3の展開も一部の地域だけにとどまっている。『2層防衛』となっているのは日本のごく一部で、十分とはいえない」と指摘します。

北朝鮮のミサイル発射能力の向上が進んでいるとみられるなか、防衛省では、迎撃態勢の強化が必要だとして、アメリカの新型迎撃ミサイルシステムを導入できないか検討が進められています。

検討されているのが、イージス艦と同様の能力があり、地上に配備する「イージス・アショア」と呼ばれるシステムと、PAC3よりも高い位置での迎撃が可能で、韓国で配備が進められている「THAAD」です。

イージス・アショアの迎撃ミサイルはSM3で、イージス艦と同じですが、導入によって常時地上から大気圏外で撃ち落とすことができるようになります。

一方のTHAADは、同時に飛んでくる複数の弾道ミサイルへの対処能力が高いとされ、「2層防衛」から「3層防衛」となることから、防衛省は、これらのシステムが導入されれば、迎撃態勢が強化されるとしています。

さらに防衛省では、革新的な技術の研究も進められています。
そのうちの1つが「高出力レーザー」です。

大きな電力を使って、数百キロワットから数メガワットという高出力のレーザーを発生させ、対象物に当てて破壊する仕組みで、弾切れの心配もなくなるうえ、光の速さで照射されるため、複数のミサイルが発射された場合も対応できるとされています。

さらに、ことしから研究が始まったのが「レールガン」です。
レールガンとは鉄や銅など電気を通す金属製のレールに弾丸をはさみ、火薬の爆発ではなく電気エネルギーを活用して弾丸を発射するもので、実現すれば迎撃ミサイルよりも格段に速く、音速の7倍程度の速さで撃ち出すことができます。

高出力レーザーやレールガンは、アメリカを含め複数の国が技術を獲得しようと研究・開発を続けていますが、日本で弾道ミサイル防衛に活用されるまでには、まだまだ時間が必要で、20年以上はかかると見られています。

ただ、新型の迎撃ミサイルシステムの導入にも課題があります。

1つは、費用の問題です。
日本全域を防護するためには「イージス・アショア」の場合は2基程度必要とされ、1基当たりの価格は800億円程度と見込まれています。

さらに、SM3を改良した新型の迎撃ミサイルは、1発あたりが40億円程度に上るという指摘もあります。
THAADも1基当たりの価格は800億円程度、迎撃ミサイル1発の価格が10億円余りとみられていますが、日本全域を守るには6基程度が必要とされています。

どちらの迎撃システムを導入するにせよ、多額の費用がかかるのは間違いありません。
さらに、実際の運用までにかかる時間も課題です。
どちらの迎撃システムも、配備する場所の選定や自治体との調整に一定の期間がかかるとみられ、その間に、北朝鮮の核・ミサイル開発がどこまで進展するかも見極める必要があります。

防衛省関係者は「新型の迎撃ミサイルシステムを運用できるようになるには、5年くらいかかるだろう。だが、運用が開始されたときに北朝鮮のミサイルの能力が、迎撃能力を上回っていればシステムを導入する意味がない」と指摘します。

さらに導入にあたっては、韓国で配備が進められているTHAADをめぐって、中国が反発していることも踏まえ、近隣諸国との関係も考慮する必要があります。

こうした中、自民党内には、飛んできたミサイルをミサイルで撃ち落とそうとする今の迎撃態勢を、抜本的に変えるべきだという声が上がっています。

その柱の1つになるのが、日本に対する攻撃を防ぐため、他に手段がない場合のやむをえない必要最小限度の措置として、自衛隊が敵の基地を攻撃する能力、「敵基地反撃能力」の保有です。

ことし3月に、自民党が安倍総理大臣に提出した提言に盛り込まれました。
「敵基地反撃能力」、いわゆる敵基地攻撃能力について、政府は「他に手段がないと認められるものに限り、敵の基地を攻撃することは憲法が認める自衛の範囲内だ」としています。

こうした政府の立場を踏まえ、自民党は、保有するための検討を直ちに始めるよう求めたのです。

提言の取りまとめにあたった防衛大臣経験者は「日本を攻撃する明々白々な事実があって、それに対して反撃するという意味で、いちばん撃ち落とせる確実な場所が発射する前のミサイル基地だ。こういう能力を持てば抑止力にもなる」と説明しています。

ただ、敵基地攻撃能力に対しては、民進党や共産党などの野党から、「ミサイル発射に移動式発射台や潜水艦が使われ、兆候がつかみにくくなっている中、敵基地を攻撃する能力を持つのは現実的ではない」といった指摘や、「そもそも、専守防衛の考えを逸脱するものだ」といった批判の声もあがっています。

また敵基地攻撃能力について、安倍総理大臣は先の通常国会で、保有する計画はないとしています。

一方で、安倍総理大臣は同じ答弁で、「わが国を取り巻く安全保障環境がいっそう厳しくなる中、あるべき防衛力の姿について不断の検討を行っていくことは政府として当然の責任だ」と述べました。

政府は、5年間の防衛費の総額などを定めた中期防=中期防衛力整備計画に基づいて防衛力の整備を進めていて、2019年度からの次の中期防は来年末にも決定される見通しで、今後、議論が本格化していきます。

このなかでは、ミサイル防衛政策も大きなテーマの1つになることが予想されます。
北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威が高まる中、平和的な解決に向けた外交努力を続ける一方、国民の安全を守る最善の策をどう整えていくのかという議論は必要です。

ただ、課題で指摘したように、新たな迎撃ミサイルシステムの導入には多額の費用が伴います。
社会保障費が増大し、財源が限られるなか、導入には国民の理解を得ることが不可欠となります。

by mnnoblog | 2017-07-05 10:38 | 防衛
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  (ロイターの画像と記事より)

シリアの化学兵器や北朝鮮の核兵器に対する脅威が増すなかで、生物兵器の危険性については国際的な関心事から抜け落ちてしまっているようだ。
しかし、テクノロジーと遺伝子工学の進歩が、新たな危険への扉を開く恐れがある。

「9.11」米同時多発攻撃の発生後、炭疽菌入りの郵便物が送付され5人の死者を出す事件があったが、これ以外には、近年では生物兵器による攻撃が本格的に試みられた例はほとんどない。

主要国は1970年代に生物兵器の研究を縮小してしまった。
脆弱なバクテリアやウィルスを生かしたまま爆弾やミサイルで投下する、あるいは単に散布することが困難だったからである。

アルカイダやイスラム国(IS)のような過激派組織は、もっぱら、テクノロジー面では対極の方向に向かっており、フランスのニースやドイツのベルリンなどで、乗用車やトラックを使って歩行者を攻撃するという、原始的ではあるが残虐な戦術に転じている。

大半の科学者やセキュリティー専門家は生物兵器のリスクは比較的低いままだとみているが、その状況は変化するかもしれない。
基本的な遺伝子工学技術の普及によって小規模で低コストのものが自宅でも使えるかもしれないのだ。
昨年、米航空宇宙局(NASA)に勤務していた生物工学の専門家が開発した遺伝子編集キットが売り出されている。

犯罪者たちがバクテリアやウィルスのDNAに手を加えて、はるかに致死性が高く、治療困難なものに作り変えることが可能な時代なのだ。

生物学や遺伝学研究に対する規制は、国によって非常に異なっている。
だが、そのような手法による兵器製造は、1975年の生物兵器禁止条約によって、ほぼ違法とされている。

だが一部の専門家は、近年の技術的進歩によって、より効果的で致死性の高い新たな病原体を設計することが容易になっているのではないかと懸念する。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は2月に、こうした兵器を使った紛争により、核戦争よりも多くの死者が出る可能性があると警告した。

科学者が最初にヒトゲノムの配列を確定したのは2003年だが、これには膨大な労力と費用がかかった。
現在ではコンピューターの能力向上により、この種のテクノロジー(個々の人間、動物、植物、病原体のDNAにおける差異の分析)のコストは年々急速に低下している。

まだ意見は分かれているものの、科学者の一部からは、基本的な遺伝子工学手法が普及するにつれて、特定個人のDNAや、下手をすると民族集団全体を標的にするような高度な新兵器を創り出すことが容易になるかもしれないという考えが提起されている。

ジョセフ・リーバーマン米上院議員は、「9.11」以前から生物兵器による攻撃への警戒を呼びかけており、米国がこれを回避できているのは「まったくの幸運」であったと述べている。
同上院議員は先月、ドナルド・トランプ大統領と連邦議会に対し、生物兵器に対する防御を国家的な優先課題にするよう求めた。

米中央情報局(CIA)の元職員ロルフ・モワトラーセン氏は、2010年の論文のなかで、アルカイダが核兵器入手と同じレベルの優先課題として生物兵器の獲得を求めていた状況を紹介している。
アルカイダはいずれも果たせず、代わりに従来型攻撃に注力することになった。

米国陸軍士官学校の対テロ戦闘センターによる昨年の報告書では、ISも生物兵器獲得に熱心だと結論付けられている。
ISはすでにモスルをめぐる戦闘などで原始的化学兵器を使用している。
ただし、それによって大きな犠牲を与えることには失敗している。

意図的な攻撃がないとしても、大規模なパンデミック(感染症流行)の脅威は現実的だ。

米疾病管理予防センター(CDCP)や世界保健機構などの組織は、常に大流行の兆候への警戒を怠らない。
科学者らが数十年にわたって警告を続けているように、人類は、1世紀前に推定5000万人─1億人の死者を出したスペイン風邪(インフルエンザ)と同等規模の深刻なパンデミックのリスクを抱えているのである。

現代社会は、感染症対策をたくさん用意してはいるが、弱点もある。
航空機を使った移動により、感染症が以前よりも急速に拡大しやすくなっているのだ。

米陸軍士官学校の報告書によれば、IS構成員から2014年に押収されたラップトップに保存された文書では、動物から抽出した腺ペスト菌を培養・使用する方法が検証されていたという。
ただしこの報告書は結論として、他の武装グループ同様、ISが生物兵器を使って多数の犠牲者を生むような攻撃を仕掛ける能力を獲得する可能性は「非常に低い」と述べている。

2014年の西アフリカ地域におけるエボラ熱流行するなかで、ISなどの過激派組織がこの状況を利用するのではないかと欧米諸国の当局者は案じていた。
米陸軍士官学校の報告書によれば、特に、ISが感染者を確保し、他の地域にエボラ熱を拡散させるために利用するのではないかという懸念があったという。

しかし実際には、こうした手法が用いられたとしても、その効果は限定的だろう。
感染者は必ず発症するだろうし、そうすれば比較的迅速にエボラ熱患者として特定できる。
大流行における他の例と同じように、感染抑制措置によって、患者は管理下に置かれることになる。

それでも、単純な攻撃が功を奏する可能性はある。

1984年、インドの神秘思想家バグワン・シュリ・ラジニーシ氏が主宰する宗教団体が、10店舗のサラダバーでサルモネラ菌を散布したことにより、オレゴン州を中心に751人が食中毒を起こし、45人が入院した。
死者は出なかったものの、依然として、最近の米国史における最大規模のバイオ攻撃である。
首謀者たちが一時検討していたように、腸チフス菌を使っていたら、死者が出ていても不思議はない。

1995年に東京で13人が犠牲となった地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は、民間集団による最も高度な生物兵器プログラムを有していたと一般に考えられている。
だが、オウム真理教による炭疽菌などの病原体による攻撃は成功しなかった。
それが化学兵器に重点を切り替えた大きな理由の1つである。

何よりも危険なのは、専門知識を有する少数の人間のうちの誰かが、単独攻撃を決意することかもしれない。
2011年後半に政府などの機関に炭疽菌入り封筒が送付される事件の発生以来、連邦捜査局(FBI)は、米陸軍に所属する微生物学者ブルース・アイビンスの単独犯行であると結論づけた。

アイビンスは2008年、予定されていた逮捕の直前に自殺した。
後に科学者らによる調査委員会は、アイビンスの犯行であるとしたFBIの証拠に疑問を投げかけている。

他にも危険はある。
北朝鮮の金正恩体制が崩壊する場合、天然痘菌を含む可能性のある生物兵器を同国政府が放出するのではないか、と一部で懸念されている。

第1次世界大戦では化学兵器が、第2次世界大戦では原子爆弾が登場した。
一部の専門家は長年にわたって、時代を特徴付ける次の大戦では生物兵器が使われるのではないかと警告し続けている。


by mnnoblog | 2017-05-19 08:30 | 防衛
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  (日経新聞の画像と記事より)

世界中を襲った過去最大規模のサイバー攻撃では鉄道、医療、通信など重要インフラが集中的に狙われた。

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の脆弱なセキュリティー対策に狙いを定め、脅迫して得るカネにビットコインを指定するなど、犯罪者は新しいIT(情報技術)技術の盲点を突いて大金を奪おうとたくらむ。
別のグループによる第2、3波の攻撃も予想される。

菅義偉官房長官は15日午後の記者会見で大規模サイバー攻撃について「被害を受けた情報が複数寄せられた」と明らかにした。

民間のJPCERTコーディネーションセンターによると13日午前までに国内で感染した事例はIPアドレスベースで600カ所、端末ベースで2000機。15日は多くの企業が活動を再開し、被害は一段と広がっているとみられる。

国外ではインフラや大規模な生産工場への攻撃が目立つ。
日産自動車の英国工場で生産システムに障害が出たほか仏ルノーの欧州の複数の工場で稼働が停止した。
ドイツでは鉄道の運行掲示板や発券機が故障した。

英国の病院で手術の中止が相次ぎ、スペイン通信大手テレフォニカも被害を受けた。
川崎市では上下水道局でパソコン1台がランサム(身代金)ウエアに感染した。
日立製作所のグループ会社では量販店との間でやり取りしている家電の受発注システムが停止し、15日夜時点で復旧作業中だ。

重要インフラを担う企業や自治体で障害が続出したのは偶然ではない。
情報セキュリティー会社、サイバーディフェンス研究所の名和利男上級分析官は早急にデータを復旧しないと大きな不利益を被る企業を選んで攻撃を仕掛けたとみている。
システムの停止が許されず「カネを奪う環境が整いやすい」という。

インフラにIoTの技術が浸透したことが犯罪の余地を広げた。
かつてネットにつながっていなかった鉄道の発券機や工場の生産システムで今回、障害が発生している。

生産現場などの制御機器はシステムに合わせて作り込むため更新しにくい。
ウィンドウズ「XP」など古い基本ソフト(OS)を放置しがちなケースを犯罪者は突いた。

国立情報学研究所の高倉弘喜教授は「ソフトウエアの互換性や認証の制約などで最新の欠陥修正ソフトを適用できない利用が増えた。
IoT化への警鐘といえるかもしれない」と指摘する。

今回使われたウイルス、ランサムウエアは感染するとパソコンやサーバー内のデータが暗号化され、使えなくなる。
元に戻す見返りに金銭を要求するメッセージが画面に現れ、過去には実際に支払ったとの報告も続出している。

1990年代から存在する手口だが昨年から世界で被害が増えた。
背景に仮想通貨「ビットコイン」の普及がある。
ビットコインはアプリケーション上でクレジットカードなどで購入し、指定されたアドレスに簡単に入金できる。
取引に金融機関を介さず個人が特定されにくいため高確率で大金を奪えると犯罪者は読んだ。
金銭要求メッセージのリンクをたどると、支払い方法が詳細に記されているケースもある。

攻撃は被害の多い欧州で金曜(12日)午後に発生した。
対応が難しい週末に入る直前を狙った可能性がある。
「本日中に解決しなければならないという被害者の焦燥感を利用しようとした」(サイバーディフェンス研究所の名和氏)という。

従来型サイバー攻撃はオンライン銀行や信販会社の監視が厳しくなり、手口が限られてきた。
今回の攻撃ソフトの元になった米国家安全保障局(NSA)のソフトはハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」がネット上で公開し、誰でも利用できる。

別の犯罪グループによる新たな攻撃が多発することが懸念される。

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2017/5/17,日経新聞

世界各地で起きた大規模サイバー攻撃に北朝鮮が関与した可能性が浮上した。

社会の混乱や外貨の獲得を狙ったとみられている。
北朝鮮偵察総局傘下の「121部隊」が関わった可能性もある。
国家ぐるみのサイバー犯罪が事実であれば、国際社会にとって大きな脅威となる。

米グーグルの研究者は、今回の攻撃に使われたソフト「ワナクライ」の初期版に、北朝鮮が関与した技術的痕跡があると指摘した。
北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」が2015年に使った攻撃ソフトと同じ記述がプログラムに見つかった。
ロシアの情報セキュリティー企業、カスペルスキー研究所は「ラザルスはウイルス工場を運営している」と指摘した。

今回の攻撃ソフトのもとになったのは、米国家安全保障局(NSA)が見つけたマイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の欠陥だ。
ハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」がネットで暴露し、ラザルスはこの欠陥を突くソフトを開発したとみられる。

韓国メディアは「121部隊」が攻撃の背後にいると指摘する。
韓国大手紙の中央日報によると、北朝鮮のサイバー攻撃は同部隊が主に担当する。
上部組織の偵察総局は戦時は情報収集と工作活動に従事するが、平時の業務は「テロ」だ。
2月にマレーシアで起きた金正男(キム・ジョンナム)氏の殺害事件にも関与したとされる。

北朝鮮はサイバー戦を核・ミサイル開発と並ぶ戦略手段に位置づけているという。
サイバー攻撃要員は7000人程度と推定され、主に中国の瀋陽や丹東のホテルに長期滞在して活動しているもようだ。

14年に発覚したソニー米映画子会社へのサイバー攻撃も同部隊が実行したとされる。
同社は当時、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の暗殺計画を題材にしたコメディー映画「ザ・インタビュー」を制作し、公開準備を進めていた。
北朝鮮は関与を認めなかったが、米政府は政府ぐるみの犯行と断定し、偵察総局や関係者らを対象とする追加制裁に踏み切った。

同部隊は銀行へのサイバー攻撃で資金を奪取する「銀行強盗」にも乗り出しているようだ。
バングラデシュ中銀のハッキング事件にも関わったとされ、北朝鮮は世界の大手金融機関でつくる国際銀行間通信協会(スイフト)から締め出された。

スイフトから締め出され、ネットワークを通じた銀行のハッキングが困難になった。北朝鮮は、データ復旧の代わりに金銭を要求する「ランサム(身代金)ウエア」を新たな資金獲得手段に位置づけているという。

韓国の国家情報院は北朝鮮による犯行説について「確認されてはいないが、北朝鮮の可能性を含めて関連事案を把握中だ」と語った。


by mnnoblog | 2017-05-16 06:25 | 防衛
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(産経新聞の記事より)

訪日したペンス米副大統領は18日、北朝鮮に核・ミサイル開発を中止させるため日米韓3カ国や中国が圧力を強めているとし、「北朝鮮がメッセージを理解していることに勇気づけられる。北朝鮮が理解し続けることを望んでいる」と米CNNテレビのインタビューに答えた。

ペンス氏は、オバマ前政権の「戦略的忍耐」や、過去の北朝鮮との対話が失敗に終わったとした上で、「トランプ米大統領は国際社会の力を結集し、経済力、外交力で北朝鮮を孤立させ、朝鮮半島の非核化という目標を達成しようとしている」と述べた。

一方、CNNテレビは、米国防総省が北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃する能力を確認するため、5月中に海上配備型迎撃ミサイルと、地上配備型迎撃ミサイル(GBI)の発射実験を行うと報じた。

海上配備型迎撃ミサイルは日米が共同開発中の「SM3ブロック2A」で中距離弾道ミサイルの迎撃を想定。
2月に初の発射実験が成功した。
GBIは大陸間弾道ミサイル(ICBM)から米本土を守るためアラスカ、カリフォルニア両州に配備されている。



by mnnoblog | 2017-04-24 08:46 | 防衛
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  (聯合ニュース の記事より)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された事件で、マレーシア警察が24日、猛毒の神経剤「VX」が殺害に使用されたとする暫定分析結果を発表した。

殺害が北朝鮮の「国家犯罪」だった疑いが強まっている中、北朝鮮が保有する化学・生物兵器の種類に関心が集まっている。

政府系シンクタンクの韓国国防研究院(KIDA)が昨年発刊した資料によると、北朝鮮は25種に達する化学剤を保有していると推定される。
化学剤は化学的性質により人命を殺傷する化合物で、神経剤、窒息剤、血液剤、びらん剤などがある。

北朝鮮はサリンやV剤などの神経剤6種、マスタードやルイサイトなどのびらん剤6種、シアン化水素などの血液剤3種、ホスゲンなどの窒息剤2種、嘔吐剤・催涙剤8種を保有しているとみられる。

V剤のうち代表的なものがVXだ。
マレーシアの保健当局は正男氏の顔や目から採取したサンプルを調べた結果、神経剤のVXを検出したという。

VXは現在知られている毒ガスのうちで最も有毒な神経剤で、数分で命を奪うこともある。
呼吸器や直接の摂取、目、皮膚などを通して体内に吸収され、サリンガスよりも100倍以上強い毒性を発揮する。
現在は生産が全面禁止されている。

北朝鮮の金正恩政権が正男氏の暗殺にVXを使用したとすれば、絶対に失敗し得ない手段を用いたことになる。

一方、KIDAによると、北朝鮮は生物兵器用の病原体も13種保有していると推定される。
7種の細菌(炭疽菌、ブルセラ菌、野兎病菌、腸チフス菌など)と1種のリケッチア(発疹チフス)、3種のウイルス(天然痘、黄熱、流行性出血熱)、2種の毒素(ボツリヌス、T2トキシン)だ。

KIDAと韓国軍当局は「このうち兵器化が進められると推定されるのは炭疽菌、天然痘、ペスト、コレラ、ボツリヌスの5種」とし、「特に炭疽菌は致死率が高く、兵器化が最も有力視される細菌」だと説明している。

北朝鮮は平壌の国家科学院内の第1生物研究所、平城の微生物研究所、平安北道・枇ヒョンの細菌武器研究所、平安北道・定州の25号工場、平安北道・宣川の細菌研究所など、生物兵器の研究や培養・生産施設を17か所運営中とされる。

韓国軍は、北朝鮮がさまざまな種類の生物兵器を独自に培養・生産する能力を備えており、2500~5000トンの化学兵器を貯蔵しているとみている。


by mnnoblog | 2017-02-26 08:35 | 防衛
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  (日テレNEWS24の記事とウィキペディアの画像より)

アメリカ海軍は18日、南シナ海で原子力空母カールビンソンが活動を始めたと発表した。
海洋進出を強める中国をけん制する狙いがあるとみられる。

アメリカ海軍によると、原子力空母カールビンソンやミサイル駆逐艦などからなる艦隊が18日、南シナ海で活動を始めたという。

アメリカ海軍は「定期的なパトロール」と位置づけていて、国防総省の当局者もNNNの取材に対し、中国が造成した人工島の周辺を通行する「航行の自由作戦」ではないとしている。

トランプ政権として、海洋進出を強める中国をけん制すると共に中国がどう対応してくるか見極める狙いがあるものとみられる。


by mnnoblog | 2017-02-21 08:18 | 防衛
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  (JBpress の画像と記事より)

オバマ政権最後の年である2016年、中国は南沙諸島に誕生させた7つの人工島の軍事拠点化を急ピッチで進めた。

オバマ政権は中国の軍事的拡張政策に対して強硬策をとらなかった。
だが、次の政権が引き続き対中軟弱政策をとる保証はない。
そこで、人工島に各種軍事施設を次から次へと建設していったわけである。

2016年当初、中国は南シナ海の7つの人工島のうちスービ礁、ファイアリークロス礁、ミスチーフ礁に、それぞれ3000メートル級滑走路の建設を進めていた。
今やそれらの滑走路は、戦闘機から爆撃機や大型旅客機まであらゆる航空機が使用できる状態になっている。

滑走路周辺にはまだ完全には完成していないものの、戦闘機や爆撃機などの格納施設や整備施設も姿を現しており、管制施設やレーダー施設をはじめとする空軍設備群の建設も完成目前である。
そのため、2017年中には、それら3カ所の航空基地に人民解放軍海軍あるいは空軍の航空部隊が配備されることは十二分に可能な状態である。

それぞれの人工島には、航空施設に加えて、中国海軍艦艇や中国海警局巡視船艇が拠点とすることができるだけの港湾施設の建設も進められている。
いまだ海軍艦艇などが母港化している状態ではないものの、2017年中にはいくつかの人工島港湾に海軍フリゲートやコルベットそれに海警局武装巡視船が配備されるかもしれない。

それぞれの人工島には、地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊が各種レーダー施設と共に配備され始めている。
かねてより米海軍戦略家たちが危惧していた通り、南沙諸島に中国海軍が数セットの空母艦隊を展開させたような状況が現実のものとなりつつあるのだ。

また、中国が誕生させた人工島には、軍事施設だけでなく巨大灯台や海洋気象観測所、漁業基地、それに大規模リゾート施設の開発まで予定されている。
多数の旅行者を含む民間人が滞在し、軍事施設と非軍事民生施設が混在する人工島基地群を軍事攻撃することは、各種ピンポイント攻撃能力を有するアメリカ軍といえども避けざるを得ない。

要するに、南沙諸島に出現した7つの人工島基地群は、中国海洋戦力にとっては不沈空母艦隊以上の働きを期待できる前方展開拠点となるのである。

米海軍戦略家の多くは中国による人工島建設の動きを事前に探知し、オバマ政権に「中国の南シナ海における拡張政策にストップをかける諸対策を実施すべき」との進言を繰り返していた。
しかしながら、中国との深刻な軋轢を何よりも恐れていたオバマ政権は、そうした提言に耳を貸そうとはしなかった。

2015年後半になって、かなり進展した人工島建設状況をCNNが実況して騒ぎになると、ようやくオバマ政権は中国に対する牽制作戦にしぶしぶゴーサインを出した。
しかし、海軍が許可された「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)はあくまで中国側を過度に刺激しない限度に制限されたため、さしたる効果が期待できる代物ではなかった。

おまけにそれらのFONOPは、中国側にさらに次の行動を起こさせる副作用まで引き起こしてしまった。
つまり中国側は、全く軍事的脅威など受けていないにもかかわらず、「アメリカ海軍が中国の領域に軍事的威圧を加えてきたため、中国の領域を守り、島嶼に居住する人民を保護するため」と称して、アメリカがFONOPを行った島嶼環礁やその周辺の人工島に地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊を配備したのである。

このようにオバマ政権の“腰が引けたFONOP”は何の牽制効果ももたらさず、中国がせっせと南沙人工島や西沙諸島で進める軍事施設の充実を後押ししただけの結果に終わった。

トランプ新政権の海軍長官には、以前より南シナ海問題での対中強攻策を主張してきたフォーブス議員(あるいはフォーブス議員と同じ海軍戦略の唱道者の誰か)が就任するとみられる。
したがって、南シナ海における中国の軍事的拡張政策に対するトランプ政権の態度が強硬なものとなることは間違いない。

とはいっても、すでに西沙諸島には立派な軍事拠点と政府機関それに商業漁業施設などが誕生している。
また、7つの人工島でも軍事施設と民間施設の建設が完成の域に近づいており、スカボロー礁での中国の実効支配態勢も盤石になってきている。
したがって、アメリカが中国にそれらの軍事施設や人工島からの撤収を迫ることは、かつて日本に対して満州からの総引き揚げを迫ったのと同様に、戦争を意味することになる。

そのため、いくら対中強硬派がトランプ政権の南シナ海政策を舵取りするとは言っても、アメリカ自身の領土が侵されているわけではない以上、対中軍事衝突といったような選択肢をとるわけにはいかない。
なによりも、オバマ政権の8年間でアメリカの海洋戦力は大幅に弱体化してしまっているので、中国との戦闘を覚悟した対中強攻策などは全く論外のオプションである。

当面の間は、トランプ次期大統領が口にする「アメリカ第一」という標語の通り、中国の南シナ海侵攻戦略への対抗以前に、アメリカ自身の海洋戦力再興を推し進めることにプライオリティーが置かれることには疑いの余地はない。
あくまでもアメリカの海洋戦力が強力になってから、次の一手が開始されるのだ。

もっとも、オバマ政権と違って、中国の侵略的海洋政策に断固として反対する立場を明示するために、より頻繁に、そしてやや強硬なFONOPを南シナ海で実施することになるであろう。

その際、日本にもFONOPの参加を(オバマ政権とは違って)強く求めてくる可能性が高い。
なぜならば、2016年9月に稲田防衛大臣が米国の南シナ海でのFONOPを支持すると明言したからだ。
そして何よりも、トランプ政権の考える日米同盟の強化とは、理念的な言葉の遊びではなく、日米双方が実質的に軍事力を出し合って、共通の目的を実現していくことを意味するからである。


by mnnoblog | 2017-01-16 08:16 | 防衛
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  (Newsweekの画像と記事より)

英国のキム・ダロク駐米大使は1日、日本に派遣している英空軍のタイフーン戦闘機に南シナ海上空を飛行させ、2020年に就役する空母2隻を太平洋に派遣する見通しだと述べた。

南シナ海での航行の自由を守るのが目的だという。

ダロク氏は「航海の自由を守り、航路や空路を維持するという米政府の目標を共有する」と述べた。

南シナ海や東シナ海における中国の動きをめぐって緊張が高まる中、英国は10月、自衛隊との演習に参加させるため戦闘機4機を日本に派遣していた。


by mnnoblog | 2016-12-11 08:57 | 防衛
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  (JBpressの画像と記事より)

ロシア海軍極東艦隊が、国後島と択捉島に島嶼防衛用の地対艦ミサイルシステムを配備したことを公表した。

ロシア外交当局ならびにロシア軍部に、占領地域を日本に返還する発想など存在しないことは周知の事実である。
それにもかかわらず日本側には安倍・プーチン会談への期待が高まっていた。
だが、安倍・プーチン会談の直前に地対艦ミサイルが南千島に配備されたことにより、日本当局は改めてロシアとの領土問題交渉の困難さを再認識させられたようである。

地対艦ミサイルの南千島への配備は、ロシア軍がプーチン大統領の日本訪問に合わせてあわてて実施したわけではない。

強力な地対艦ミサイルシステムを国後島、択捉島などに配備する計画は、すでに2013年には明らかにされており、2015年には2016年中に配備を完了する旨が再確認されている。
ロシア軍にとっては「以前からの予定通り、2016年12月までに南千島に配備した」だけのことである。

したがって、これら地対艦ミサイルシステムの配備が明らかになったからといって「プーチン大統領の訪日直前というタイミングで地対艦ミサイルを南千島に配備しなくともいいではないか」という感情論が日本政府筋から湧き出るのは、むしろ外交の無策さをさらけ出すことになる。

ロシア軍が国後島に配備した地対艦ミサイルシステムは、Zveda Kh-35対艦ミサイルの地上発射バージョンで、3K60「バル」地対艦ミサイルシステムである。
Kh-35対艦ミサイルは航空機発射型、艦艇発射型それに地上発射型があり、西側諸国でポピュラーなアメリカ製対艦ミサイル「ハープーン」になぞらえて、「ハープーンスキー」と呼ばれている。

国後島のバル地対艦ミサイルシステムから発射されるKh-35対艦ミサイルの最大射程距離は、従来型の場合130キロメートル、最新型の場合300キロメートルと言われている。
いずれも、非核弾頭(高性能爆薬弾頭)が搭載され、海上から10~15メートルの低空を巡航速度マッハ0.8で飛行し、攻撃目標に突入する際には海上すれすれの高度4メートルを飛翔する。

バル地対艦ミサイルシステムを国後島に配備した主たる目的は、アメリカ海軍の水上艦艇、とりわけ空母打撃群が国後島周辺の海峡部を自由に航行するのを妨げるとともに、アメリカ海軍水陸両用戦隊の国後島への接近、上陸を阻止することにある。

もちろん、国後島、色丹島、歯舞諸島の周辺海域を航行する海上自衛隊水上艦艇を撃破するには十二分な威力を発揮する。

バル地対艦ミサイルよりも数段強力なのが、択捉島に配備されたK-300P「バスチオンP」沿岸防備ミサイルシステムである。
この地対艦ミサイルシステムは、地上移動式発射装置から飛翔速度マッハ2.5のP-800「オーニクス」超音速対艦ミサイルを発射する。
現在のところ史上最強と言われている地対艦ミサイルである。

オーニクス超音速対艦ミサイルは、敵の迎撃ミサイルを回避しながら、対艦攻撃だけではなく地上目標の攻撃も可能である。対艦攻撃の場合、最大射程距離は120キロメートル(発射直後から着弾まで超低空飛行を続けた場合)から350キロメートル、対地攻撃任務の場合には450キロメートルとされている。

択捉島中央部に配置についたバスチオンP地対艦ミサイルシステムからは、択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島、それに得撫島周辺海域に接近する日米の水上艦艇を攻撃することが可能である。
国後島に配備されたバル地対艦ミサイルと連動すれば、アメリカ海軍空母打撃群や、海兵隊が乗り込んだ水陸両用戦隊が南千島へ接近するのを阻止する態勢は極めて強固なものとなる。

日本にとっては、有事の際には海上自衛隊艦艇が北方4島へ接近するのが困難になるだけでなく、旭川や帯広を含む北海道の東半分が、オーニクス超音速対艦ミサイルの攻撃圏内にすっぽり収まってしまうというきわめて深刻な事態となったのだ。


by mnnoblog | 2016-12-08 08:32 | 防衛
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  (JB press の記事より)

8月上旬、尖閣諸島海域で中国の大量の漁船、公船が領海侵犯を繰り返した。
1カ月後の9月4~5日に、今年の中国における最大の外交イベントとなる杭州でのG20開催を控えて、外交が大事であるならやるべきでないことを中国は平気でやってのけた。

この時期、中国では「北戴河会議」と呼ばれる夏休みを利用した避暑地での非公式会議が行われ、そこでもG20の成功裏の開催に向けた調整がなされたことはまず間違いない。
それにもかかわらず、中国は日中関係をいたずらに緊張させる行動をこの時期に起こしたのである。

7月に常設仲裁裁判所は南シナ海問題に関する中国側の主張を退ける裁決を下した。尖閣諸島海域での挑発的な行動は「裁決の背後に日本の策謀があった」と言いがかりをつけた中国による「逆ギレ」対応とする見方もできる。

だが、中国海軍の最近の動き、例えば6月の尖閣諸島接続水域でのウラジオストクに帰還するロシア艦隊との連携行動や、中国海軍艦船の「無害航行」を口実にした口永良部島付近の航行などの延長で考えれば、様々なやり方で日本側の対応を試していることが分かる。

つまり、8月の尖閣海域での行動も、中国にとっては長期的な尖閣諸島奪取のための準備行動と見ることができるのである。
そこには「軍の忠誠」を確保したい習近平がそれを黙認し、軍より格下の外交部は文句をつけることもできないという背景が想像できる。

なぜそういった見方ができるのか。
基本的な部分から論じると、1年後の来年秋に中国は第19回中国共産党大会を控えている。
5年に一度の開催であり、習近平にとっては政権基盤をより強固なものにするチャンスである。

習近平は2012年の第18回党大会で政権の座について以来、江沢民派排除の権力闘争と連動した反腐敗キャンペーンで権力固めに邁進してきた。
江沢民派が影響力を残す党中央政治局常務委員会のこれまでのやり方であった「集団指導体制」を形骸化させ、多くの中央領導小組を作り、自分がトップを務めることで意思決定の「独占」を図ってきた。

そして歴代のトップ指導者が手を付けられないできた人民解放軍の機構改革にも大胆に取り組み、強力な指導力を内外に見せつけてきた。

党内には、習近平に正面から異を唱える人物も見当たらない。
その意味で言えば、習近平はすでに党大会に向けて万全の態勢を整えていると言ってもいいのかもしれない。

しかし、その一方で反腐敗キャンペーンは多くの敵を作っているはずであり、習近平に対する暗殺の可能性さえ語られている。
腐敗撲滅に合わせて施行された過度な倹約令は公務員の活動を萎縮させてもいる。
習近平が言論統制を強化しているのは、「党の権威を守る」ためというよりも政権批判を封じ込めるためである。
いかに自分の威信を保つかに、習近平は汲々としているのである。

さらに別の観点から見ると、習近平政権の底の浅さが分かる。
習近平は、「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を国家的スローガンとして掲げてきた。
それから4年が経過したが、習近平は成果らしきものを何ら実現していない。

中国は胡錦濤時代の2010年に経済規模で日本を抜き、米国に次ぐ存在になった。
しかし、習近平時代になって国内経済は成長鈍化を続け、過剰生産能力の削減や赤字を垂れ流し続ける国有の「ゾンビ企業」排除に四苦八苦している。
地方を中心とした公的債務の増大も危険視されている。
一時期脚光を浴びた習近平の世界戦略である「一帯一路」(陸路のシルクロード経済ベルトと海路の21世紀海上シルクロード)も最近ではトーンダウンの印象がある。

対外関係については目も当てられない状況となっている。
とりわけ習近平が重視しているとされる周辺諸国との関係で言えば、内陸の中央アジア方面は別として、北朝鮮、韓国、日本、フィリピン、ベトナムという東シナ海から南シナ海にかけての近隣諸国との関係はことごとく悪化している。

それもすべて中国の対応が原因となっている。
北朝鮮の核開発や弾道ミサイル実験に有効な制裁策が取れず、北朝鮮のミサイル脅威に対抗するために韓国が米国の提案する終末高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の在韓米軍への配備決定に同意したら、それが中国の安全利益を脅かすとして強硬に反対し、フィリピンが提訴した南シナ海仲裁裁判では裁定を断固拒否し、国連安保理常任理事国としてはあるまじき国際法廷軽視の態度を取ってきた。
もちろん、南シナ海における「航行の自由」を掲げる米国との関係も悪化している。

このように内憂外患が深刻化する状況にあって、習近平が局面打開を切実に望んでいるとすれば、来年の党大会に臨むに当たり、「歴史に名を残す」実績が欲しいのではないか。

厳しい見方をすれば、習近平時代になって権力の集中は進んだものの、政権としての実績は「反腐敗」以外見るべきものがないのが実状だ。
習近平自身の求心力を高め、自分の意のままに党大会を乗り切り、盤石の体制を作り上げ、あわよくば政治局常務委員の定年制を改定し政権3期目を目指すとすれば、ぜひとも国を挙げて拍手喝采を受ける成果を上げたいはずだ。

その文脈で言えば、習近平が掲げる「中華民族の偉大な復興」は、「失われた領土主権の回復」に絡んだ次の3つの課題実現と考えていいだろう。

第1に「台湾統一」、第2に「南シナ海の『中国の内海』化」、第3に「尖閣(釣魚島)回収」である。

もちろん、これらを同時に実現することなど不可能だろう。
中国革命を完結させる「台湾統一」はますます困難の度を高め、「現状維持」がやっと、という状況にある。

オプションとして「武力統一」は残されているものの、それが中国にもたらす国際的ダメージは計り知れない。
台湾内部では、自らを「中国人ではなく台湾人だ」と認識する台湾人アイデンティティーの高まりは不可逆的なものであり、「事実上の独立国」だと認識する台湾人が常態化している現実を中国は直視する必要がある。

「南シナ海の『中国の内海』化」は、中国にとってはミサイル原潜を遊弋させるための聖域確保という戦略的要請が背後にあるが、人工島建設など強引な実効支配の拡大は国際的な批判を招いてきた。
国際法を軽視する言動とあいまって、南シナ海問題であまりに対中懸念を高めてしまったため、しばらくは習近平政権として強硬策は取りづらいだろう。

問題は「尖閣(釣魚島)回収」である。

前ニ者と比べ、中国側にもたらす利益は小さい。
しかし、日中国交正常化以来の懸案を「解決」したという実績は大きい。

中国の一般民衆が「釣魚島は中国のものだ」と信じて疑わない現実に照らせば、「尖閣(釣魚島)回収」の国内的な政治効果はとてつもなく大きいことは間違いない。
しかも、ここ1年以内に実行が可能であることも指摘しておくべきだろう。

ただし、当然ながらリスクを伴う。
最大のリスクは、回収に失敗することである。失敗すれば、場合によっては習近平の政治生命に関わるだろう。

尖閣海域を含む東シナ海での中国海軍の行動が「尖閣(釣魚島)回収」のための準備であるとすれば、日本側の反応を探ることでリスクを最小化するための努力の一環であることは間違いない。

また、中国にとってもう1つ重要なのは、米国と話をつけ、米中戦争にエスカレートさせるのはお互いの利益とならないことを説得し、事態を極限化することを条件に米国から暗黙の了解を得ることである。

米国は尖閣諸島を日米安保条約の適用範囲内であるとしてきたが、実際に尖閣有事となった場合、無人の島を守るために米軍がわざわざ介入することも考えにくい。
米国に話をつけ、「口先介入」に留めることができれば中国側のリスクはクリアできる。

米国と話をつけるならば、事を起こす直前となるはずだが、年内に日中韓首脳会談の日本開催が実現しそうな状況下で中国が事を起こすのは可能性として大きくはないだろう。

しかし、11月の米大統領選挙で誰が当選しようが、来年1月下旬の大統領就任から政府高官の人事が固まり切るまでにおよそ半年かかる。
米国の新政権が意思決定しづらいこの時期が中国に取ってのチャンスかもしれない。

実際の回収作戦がどのような形になるかは分からないが、きわめて短期間の局地戦で中国が勝利し、兵員を上陸させ実効支配態勢を取り、尖閣諸島上空の制空権を確保できれば「中国の勝利」ということになる。

いかに海上自衛隊が精強であっても、作戦の時間と場所を自分で設定できる先制攻撃が中国を優位に立たせることは間違いない。

唯一、有効な対応策があるとすれば、それは「自衛隊の尖閣諸島常駐」しかないかもしれない。
しかし、そこから生じる政治・外交的リスクは、「中国に尖閣諸島攻撃の口実を与える」ことも含め、きわめて高いものとなることを覚悟しなければならないだろう。

上記のことを杞憂だと考えるのはその人の自由だ。
しかし、世界各地で無秩序化が進む中で、「考えられないことが起こる」事態でさえも備えなければならない。
いや、尖閣危機は十分考えられる「起こりうる危機」だと肝に銘じる必要がある。


by mnnoblog | 2016-09-07 08:09 | 防衛

のほほんと---


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